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243話 ページ12

「違う。違うんだ!やめろ!やめてくれ!!!!」

その悲鳴に、花は枯れ果て、空は闇に染まった。
まるでシンドバッドの心理を反映するように。

多くの過ちをおかした。
多くの人間を()みにじり、犠牲にした。
どれほど人々が持て(はや)そうと、俺は自分の無力さ、薄汚さを知っている。

一方で、民衆で建国の王。七海の覇王とシンドバッドを囃し立てる。

いつの日か、そんな男は王にふさわしくないと指をさされる日が来るだろう。

崩れ頭を抑え込んだシンドバッドの視線の先に、誰かの足が見えた。
薄汚れた、底が壊れた靴。

「お前だ」

地を()うような低い男の声。

顔をあげる勇気はなかった。

「貴方よ」

増えた声に脂汗が吹き出る。

「お前のせいで俺達は殺された!!」
「助けて…!苦しいよぉ」
「何が王よ!人殺し!!」
「助けて…!助けて!!」

嫌だ。来るな!
もう嫌だ、嫌だ!!!

ひたすら体を丸め罵声(ばせい)やり過ごしていたシンドバッドは、気が付けば小さな子供の姿に戻っていた。
大粒の涙を流し、しゃくりあげる。

「おれのせいじゃない。おれだって…!うぅ…ひっく!えっく…」

いつも必死だった。
戦をなくし、人権を無視されるような世を変え、それがせめての罪滅ぼしだと信じて。

「だから、アラン王はお前をここへ逃がした。」
「アラン王?だれ?」

涙目で顔をあげたシンドバッドに、セレンディーネは優しい笑顔を見せた。

「この世界の王だ。ここは彼の領域(りょういき)。唯一絶対の王。」

セレンディーネが手で周囲を払う仕草をすると、風景は元の花畑に戻っていた。

セレンディーネが見えない壁を越えると、目の前にしゃがみこみ、花を摘み始めた。

「お前の心は悲鳴をあげていた。もうずっと前から。けれど、泣くことさえ許されなかったお前はブリキ玩具(おもちゃ)に油を差し動かすように、自分を(だま)しながら動き続けた。」

そんな心はいつか壊れる。

セレンディーネは、なれた手つきで摘んだ花を編む。

シンドバッドは素直に驚いた。
自分の知っているセレンディーネはこんな事をする女ではなかった。
いや、姫君だ。
出来ないわけではなかったのだろう。
捨てたのだ。

違う。
捨てさせた。
誰が。
国が。戦が。時代が。
・・・王家に救いを求めた国民が。


編み上がった花冠をセレンディーネはシンドバッドの頭に乗せた。

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飛燕(プロフ) - わわさん» ありがとうございます。最終章の続きはスピンオフシリーズ4の『星を抱くもの』になっています。よろしくお願いします (2021年11月6日 8時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
わわ - めっちゃ好きです!!ありがとうございます!! (2021年11月6日 0時) (レス) id: 3f77deffba (このIDを非表示/違反報告)
Haruhi(プロフ) - 初コメント失礼します、最初のシリーズからずっと読ませていただいてて、本当に世界観に引き込まれる素晴らしい作品です!マギの原作と同じくらいハラハラドキドキしながら楽しませてもらっています!これからも楽しみにしています(^^) (2020年4月30日 14時) (レス) id: 7d54cdb775 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年12月14日 7時

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