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36話 その2 ページ42

思ってもみなかった現実に、シンドバッドもAも言葉が出てこない。

「恐らく、今払った者たちも、時間が経てば、またここを襲おうとするでしょう。」
「襲う?貴方を?何故そう思うのでしょうか?」
「シンさん。貴方も覚えがあるでしょう?力で力を押さえつけようとすれば、恐れを呼び、更なる悲劇を生むものです」

普段の穏やかな姿とはまるで違う老婆の姿に、Aは言葉が出てこない。
お婆ちゃんはほっこり優しい笑顔で、Aを包んでくれていた。

憧れそのものだった。

「他者を操れるなど、おぞましい力。若い頃は、口がきけないふりをしていたものです。」

どれだけこの能力で老婆は悩み苦しんできたのだろう。
上手に力が使えず、暴走しそうな時期もあっただろう。

「まぁまぁ。お婆ちゃんの昔話でそんな顔をさせてしまってごめんなさいね。今はそんなことはどうでも宜しい。」

キッと顔を上げた老婆は真正面からシンドバッドを見つめた。


「シンドバッド王。貴方はこの国に何をもたらして下さいますか?」
「絶対の守護を。」

当然のように告げられた言葉に、胸が熱くなる。
それを見届けたように老婆は一つ頷いた。

「では、お助けください。シンドバッド王。」

凛とした声は非常に厳しい。

「この国には何かが入り込んでおります。その者たちが国民達の不安や恐怖を(あお)り、A様を排除しようと企んでおります。」

アル・サーメン・・・!!

背後から忍び寄るような恐怖にゾッとする。

「現在、外交の要はA様。そうでありましょう?貴方が敵の手に堕ちれば、戦を知らない国民を相手にするのは赤子の手を(ひね)るようなもの。」

この老婆は知っているのだ。
戦の悲惨さも。愚かさも。

シンドバッドの視線がAを制するように促す。
Aが聞き役ことに徹することで客観的に事柄を分析できる可能性があるからだ。

「ビスタから事情は聞きました。我々が怪しいのは1年前に現れたという商人。どこに消えたかわかりますか?」
「いいえ。ですが、この街の騒ぎは『誰が』というものはないように思います」

老婆はため息を一つ付き、慈悲深い眼差しをAに向けてくる。

「全てを貴方のせいにして、自分達の問題に向き合う事を避けている。本当に情けない事ですね」
「・・・己が創り出した敵と国民達は向き合うべきだ。そうおっしゃいたいのですね」
「そうです。」

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ミカノ(プロフ) - 飛燕さん» はい!謝肉祭とか、技名とかの時はつかってます!その方が楽なのでw更新時間、夕方にしたいんですけど、なかなか出来ないんですよね………(汗) (2015年1月5日 13時) (レス) id: 7a421dbefc (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - ミカノさん» 更新時間て少し迷いますよね(笑)昼間は学校がありますし。ちなみに、昨日からルビ機能を使い初めました。ミカノさんは使っていますか? (2015年1月5日 13時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
ミカノ(プロフ) - 飛燕さん» そんなことはないですって!!ww私も夜に更新してるので、夜が弱い人には迷惑ですからww (2015年1月5日 13時) (レス) id: 7a421dbefc (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - イノリさん» 今回、紅炎の周囲にいるのがオバチャン集団設定で、書いていて楽しいですよ(笑) (2015年1月5日 13時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - ミカノさん» 大体22時くらいに原稿が出来上がるので、朝に更新しています。朝に弱い方には迷惑な話です。(笑) (2015年1月5日 13時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2014年10月24日 20時

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