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33話 その5 ページ33

「君達が『悪女』と呼ぶ、その盾を失えば、この国は近い将来、他国に占領されるだろう。王族は滅ぼされ、暮らしも誇りも全てを奪われる。いや、それどころか労働力として国外に連れ出され、生涯解放されることはない。」
「ふざけるな!そんなわけがない!」
「そうだ!デタラメだ!」

かっと火がついたように怒鳴り出す青年達の声を聞きながら、Aは不安に襲われた。
シンドバッドが言っていることは真実だ。
ここにいる誰が理解できずともAだけはわかっている。
けれど、ここにいる全てのものにそれを想像することができないのだ。

外の世界にはもっと自由な生活、裕福な生活が待っていると憧れを持つことは悪いことではない。
が、それに伴うリスクも知らなくてはいけない。

それでこその、選択肢だ。

シンドバッドを押し止めるようにAは口を開いた。

「落ち着いてください。よく考えて。シンはシンドリア出身です。私たちが知らない世界を知っている。そうでしょう?」
ぐっと言葉に詰まった青年達はどうにか反論の言葉を探しているようだ。

「それに、外の世界を見たいだけなら方法はいくつかあります。」
Aはシンドリア船への船乗りになる方法。七海連合加盟国への留学制度がある事。
自分のように正当な目的があって国を出たい時には、国に申請を出し、許可が下りれば可能だということを丁寧に説明した。

「私もシンドリアに行きたかった人間なので、貴方達の志を否定するつもりはありません。けれど、この国を出た後のリスクもしっかりと覚悟した上で、行動をとってください」



バシッ!!

家に戻ると、Aはシンドバッドの頬を思いっきり叩いた。
理由もなくボロボロ涙が溢れてくる。

「なんであんなこと言ったの?本気になって、思いつきだけで国を出たいなんて言い出したらどうするつもりだったの?」

僅かな間、にらみ合った後、シンドバッドが折れた。
「すまなかった」
「なんで、あんなこと言ったの?」
「・・・・・腹が立った」
「・・・。は?」
「お前をあんな風に言われて腹が立った」

ぽかーん・・・。

ばつが悪そうな顔をして奥の部屋に入っていくシンドバッドの背中を見ながら、ごしごし乱暴に涙を拭った。

だから、顔が少し火照っているのはそのせいだ。そう、決めた。

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ミカノ(プロフ) - 飛燕さん» はい!謝肉祭とか、技名とかの時はつかってます!その方が楽なのでw更新時間、夕方にしたいんですけど、なかなか出来ないんですよね………(汗) (2015年1月5日 13時) (レス) id: 7a421dbefc (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - ミカノさん» 更新時間て少し迷いますよね(笑)昼間は学校がありますし。ちなみに、昨日からルビ機能を使い初めました。ミカノさんは使っていますか? (2015年1月5日 13時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
ミカノ(プロフ) - 飛燕さん» そんなことはないですって!!ww私も夜に更新してるので、夜が弱い人には迷惑ですからww (2015年1月5日 13時) (レス) id: 7a421dbefc (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - イノリさん» 今回、紅炎の周囲にいるのがオバチャン集団設定で、書いていて楽しいですよ(笑) (2015年1月5日 13時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - ミカノさん» 大体22時くらいに原稿が出来上がるので、朝に更新しています。朝に弱い方には迷惑な話です。(笑) (2015年1月5日 13時) (レス) id: ff86b3b758 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飛燕 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2014年10月24日 20時

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