道なき旅 【シンドバッド】2

番外編 Snow dance6 ページ12

「作り物で泣くな」
「うん。」

大きな腕が零れ落ちそうな涙を隠す為に、身体ごと包み込んでくれる。

「俺たちで現実にさせるんだ」
「うん」

グッと涙を堪えていると、後ろに乗っている女の子が席を立とうとして両親に止められていることに気がついた。

「雪は？降らないの？？どこ？雪」
「ここはお家の中だから雪は降らないのよ」
「ほら、危ないから座りなさい」
「だってー、雪〜！ふええええん」

どうやら女の子は、人形達を見ているうちにホワイトクリスマスのパフォーマンスがあると勘違いしてしまったらしい。

確かに白い衣装をきた人形達ばかりなので、小さい子供なら勘違いしてしまうかもしれない。

歌声さえ掻き消してしまいそうな大きな泣き声に、両親は周囲に頭を下げながら、必死に娘をなだめようとしている。

「やだぁあああ！ゆきぃぃぃ！！」
子供独特のキーンと耳に響く叫び声はもはや館内に響き渡り、なんとなく気の毒になって女の子を見ていた時だった。

ふわっと冷たいものが頬に触れた。

え？

「雪だぁあ！」

泣いていた女の子がピタリと泣き止み、懸命に手を伸ばしている。

室内なのに、雪？
しかも・・・、本物！？

女の子の両親も予想外の展開だったらしく、驚いて天井を見上げているがそれらしい仕掛けはない。

あ・・・。まさか！

隣を見ると、なんでもないような顔をしたシンドバッドの胸元が光っている。
『氷のジン・ブァレフォール』・・・か。

「お優しいですね。王様」
「レディのご所望とあらば。」

カッコつけちゃって。そう笑っていると、ちょっとした悪戯心が芽生えた。

「じゃあ、私のお願いも叶えてくれる？」

「欲しい物があるんだ！」そう笑うと、シンドバッドは少しキョトンとした後、「仰せのままに」と掬い上げたAの手にキスをした


＊


「お姫様だっこだー！！」

ヒナホホの子供達に冷やかされながらAはシンドバッドの腕の中におさまっていた。
実はアトラクションから出ると、賑やかな音楽が聞こえてきたのだ。
園内を巡るショーが始まったようで、おそらく皆もショーを観るために道沿いに集まっているだろうと目星をつけた。

そこまではいい。

問題はAの足だ。
ヒールなんかで園内を歩き回ったせいで、痛めてしまったのだ。

「シン。待って。足、イタイ」

外傷はないものの歩こうとすると激痛が走るのだ。 耐えきれなくなりAは手頃なベンチに腰をかけた。

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