30話 ページ30
万が一、紅炎が姿を変え生きていると知られれば、何故、誰が、いつ。という話になり、シャロットやアランに害が及ぶ。
2人を守る術は沈黙しかないのだ。
「わかればいい」
「え!どこ行くの?」
「船に戻る」
それが大人として正しい選択なのだろう。
でも。
さっきの・・・!
『あれが・・・』
冷ややかな従者の目。あれが日常なら、この国はAにとって住みやすい国とは言えないだろう。何故そんな思いをしてまで、この国にいるのか意味がわからない。
どうして、教えてあげないの?!
生きてるって知ったら、Aちゃんは喜ぶに決まってるのに!
紅炎の背中がどんどん遠くなっていく。
待って。
待って!
会ったら聞きたいと思っていた一番の事がまだ聞けていない。
「ま、待って!あの・・・。あの、元気でいますか。」
誰が。とは言わなくても、アランの事だと紅炎は察したようだった。
元気かと聞くのもおかしな気がしたが、他に言葉が見つからない。
「変わらずだ」
何年もかかると初めから聞いていた。
半年くらいで、何も変わらないのはわかっていても、それでもと思ってしまう。
「約束は守る。心配するな」
今度こそ振り返らず、港に向かって歩き出した紅炎の背中。
胸の中にしまいきれない『秘密ごと』の大きさに、アンナは歯を食いしばった。
アルパ城。
ゆったりと王座に腰をかけていたシャロットはひとつため息をついた。
力が全く戻らない。
少なくとも1年はかかると踏んでいたので、当然といえば当然なのだが。
やれやれ。
翼を失った鳥のようだね。
知らず知らず2度目のため息をついた時だ。
コンコン・・・と、来訪者を告げるノック音がした。
「失礼します。兄上、いらっしゃいました」
「ああ。通してくれ」
すっぽりと頭からマントを被った人物は、するりとそのマントを脱いで見せた。
青みを帯びた金色の髪と、秋空のような澄んだ空色の目。
「ようこそ。貴方の方からいらっしゃってくださるとは光栄です。ティトス様」
レーム帝国式の礼を取ると、ティトスは苦笑いをした。
「やめて下さい。確かに僕にはシェヘラザード様の記憶がありますが、僕自身は生まれたての子供のようなものです」
「さぁ、話をしましょう。我々の未来の話を」
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姉系チート(プロフ) - 更新待ってます! (2018年12月12日 10時) (レス) id: 41a0229c91 (このIDを非表示/違反報告)
飛燕(プロフ) - ☆燐★さん» ありがとうございます。しばらく序章が続きますが、お付き合いお願いします! (2018年12月3日 6時) (レス) id: 0f92dbd5b0 (このIDを非表示/違反報告)
☆燐★(プロフ) - 続編待ってました!これからも頑張ってください! (2018年11月29日 16時) (レス) id: 059af8cb76 (このIDを非表示/違反報告)
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