どうやらリクオには破門された兄がいるようですよ？ (ページ13)

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12話　裏切り者？ページ13

ふわっと風で山吹の花弁が舞い踊る。

それが僕にはスローモーションのようにゆっくりに見えて。

綺麗だと思った。

父さんと、少女の綺麗な黒髪が風に揺れる。

二人の前を元気よく走り抜ける我が弟はとても、とても、楽しそうに笑っていた。

元気いっぱいの弟に突然手を取られ、走り出す。

どんどん父さんとの距離が長くなる。

鯉「転ぶなよー。」

リ「はーい！」

「ちょ、リクオ！」

ある程度行ったところでリクオは止まった。兄ちゃん、一緒遊ぼう、とにこやかな笑顔で言う。

でも、御免。リクオ。兄ちゃんは一緒に遊べないや。

勢い良く、リクオの手を振り払った。こんなことをしたのは初めてかもしれない。

リクオのみ開かれた眼に涙が溜まる。ごめんな。何もしてないのに手を弾かれたら吃驚するし、悲しよな。ごめんな。

「ごめん、ごめんな。リクオ。でもちょっと兄ちゃんは用事があるんだ。」

ばっと後ろを向き、父さんのほうへ全速力で走る。泣きそうだ。リクオのこともあるし、父さんが死ぬかもしれないという不安で頭がいっぱいになった。

　『七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞかなしき』

ああ！やめてくれ、やめてくれ！この先は見たくない。

夢中になって走った。ただ、目の前の父さんに向かって。

届いてくれ、届いてくれ、届いて！

腕がちぎれそうなほど、伸ばした。

でも。その手が父さんの背中に届くことはなかった。

舞う、舞う。赤色が舞う。その赤は前世で何回も見た色で。もう、出来れば見たくないと思っていた色で。それが大切な人から流れるのはつらくて。

涙が止まらない。結局僕はまた大切な人を失うのか？

守れるはずの人を？また？

思考が停止した。まだ、息をしている父さんに少女が刀を突きさそうとする。

”お前がいまするべきことはそれじゃあないだろう！”

頭の中で懐かしい声がこだました。ああ、そうだね。兄さん。

弾かれたように動き出した脳に体が追いつけなくて何度も転びかけた。

それでも、前に進んだ。失いたくなかったから。

「白龍！！」

自分の声を張り上げると同時に手の中に現れた刀で少女、羽衣狐の刀を弾いた。

「羽衣狐！」

羽「邪魔が入ったか。まぁいい。どうせその男はもうじき死ぬであろう。」

そう言って、踵を返した羽衣狐に僕は叫ぶ。

「僕は、お前を絶対に許さないからな！羽衣狐！！！！」

普段出さない大声にのどが裂けるように痛かった。