番外編 「男と女の出会い」 ページ20
番外編ですから、読まなくても大丈夫です。よろしければ、お願いします。
***
「お父様は、立派に戦って亡くなったの。」
男は、泣きながら呟く母親を見ていました。
男が生まれたのは、人々争いが絶えない世界でした。
武器を握り、多くの人が戦闘の渦に飛び込んでいったのです。
男の父親となった人も、そうでした。
味方の為に、戦って死んだのでした。
まだ男が少年の時でした。
男は泣きませんでした。何も思いませんでした。
ああ、死んだのか。
自分も、数年後には、きっと部隊に入るだろうと考えながら。
男は黙って、泣きじゃくる母親に抱き締められていました。
***
くるくると季節が回り、男は部隊の中にいました。
男の部隊は、多くが新入り隊員で構成されていました。
隊服を着て、刀を脇に。男は何も怖くありませんでした。
むしろ、つまらないこんな人生を、早く終わらせたいとすら考えていました。
少し待つと。男達の前に、一人の女が現れました。
見慣れない、真っ白な髪の女でした。
鋭い瞳は、男達を見回し。女は話しだしました。
「今日から、私がお前達を率いる。
死にたくなければ、訓練を積み、実力を磨け。」
凛とした、濁りのない声でした。
声だけで、熟練の猛者だと分かりました。
それが、男が女を見た、最初の時でした。
暫く女は、隊員を見渡しました。
そして、ふと。
男の前に進みました。
男は無言で女を見ました。
女は笑いもせず、男に言いました。
「...お前に決めた。
お前を、この部隊の副長とする。
私の補佐を頼む。」
少しばかり目を見開いて、それでも男は答えました。
「...はい。」
何故、男を選んだのか。
女は教えませんでした。白い髪を揺らし、行ってしまいました。
男はため息をつきました。
簡単には、死ねなくなってしまいました。
男は去っていった女の背中を、
ずっと見つめていました。
***
読んで頂き、ありがとうございました。
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孤独な月 - 虎の月さん» ありがとうございます。少しでも、あなたの心に響いたのならば幸いです。暫く公開しますから、良ければまた来てください。 (2020年11月6日 9時) (レス) id: 1bda2ccaaa (このIDを非表示/違反報告)
虎の月 - いやはや...こんな深いお話は始めて見ました...思わず涙が...とても心温まる作品を本当にありがとうございます。期間限定とは...惜しいものです... (2020年11月3日 15時) (レス) id: 23f1f79e2c (このIDを非表示/違反報告)
孤独な月 - fubukiさん» ありがとうございます。マジですか、嬉しいです、良かった。 (2020年10月26日 1時) (レス) id: 5a3c1aad01 (このIDを非表示/違反報告)
fubuki(プロフ) - あ………………好きです。 (2020年10月25日 21時) (レス) id: 8d00889b6b (このIDを非表示/違反報告)
孤独な月 - ビードロさん» 意味、分かりましたか?...うふふ。 (2020年10月23日 8時) (レス) id: 1bda2ccaaa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:孤独な月 | 作成日時:2020年10月15日 23時