【文スト】中原中也の奮闘記録

決意 ページ21

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―――帰るか、と、云った中原君は、私の深夜の放浪に文句を云う様子はない


なんなら、心ここに在らずといった様子である

あの中原君が、だ



おかしい



と、思ったので、「寒過ぎだよ」なんて云って、自然な流れで両手をポケットに突っ込んだ


中原君は、「旨い葡萄酒持ってきた」と、深夜の酒のお誘いを交え乍私の肩に外套を掛けてくれたけど

その間もずっと心ここに在らずで




―――成る程…



中原君に、如何してほしいか、ねぇ



ポケットの中の万年筆を転がし乍考える


別に、彼に如何してほしいとか無いんだけどな

しいて云うなら世話してほしい、うん



中原君がそういう意味で色々考え込んでるんじゃないのは勿論判るけど、本当に無いんだ


だって彼を責めてないもの

私の今の状況は全部私が巻き起こした事で、中原君の所為だなんてこれっぽっちも思っちゃいない

それなのにそんなに考え込んで…―――



だから云ってるんだ、中原君は優し過ぎる、と


彼が何かしら私に悟られたくない気持ちを隠しているのは知っていた

其れが自責の念だという事も、薄々勘付いてた



最低なのは私の方だよ、甘えてるのも私だ、彼の優しさに甘えて、弁解せずに隣に居座ってる


刺激が無いとか退屈だとか云い乍、中原君と離れるのは惜しいなんて思った理由も同じ事だ


彼が、優しいから―――



一夜で組織も恋人も失って、でも自分の所為だからぶつけ所の無い感情がずっと燻ってて、其れをやり過ごすには、彼の優しさに甘えるのが一番だった

文句を云い乍世話を焼いてくれて、私の為に心を痛めてくれて


そんな彼の傍に居座って自分を保ってた




―――でももう潮時だ


悩ませ過ぎてる、解放してあげなきゃいけない



一つ、彼から離れる決意をして、私は又笑顔を作った


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其の意味は→←居たい

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