◇御幸一也・弟◇ ページ4
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「一也、バニラエッセンス少々ってどのくらい?」
「少々は少々だって」
「グラムで書いてくんないと分かんない」
「………料理できねえ奴の典型だな」
「貸してみ」と私からボウルを受け取って3回くらい小瓶を振ってバニラエッセンスを投入した。
一也は野球の練習着のまま心配そうに私の手元を見ている。中学生に心配されるってどうなの。
「練習から帰って早々おかし作り手伝わされるとは…」
「一也料理上手じゃん!」
「姉ちゃんよりはね」
「生意気」
「はっはっはっ本当のことだろ?」
「お父さんにお小遣い減らせって言っとこー」
「姉ちゃん超美人、大好き」
「調子いいんだから」
コロッと態度を変える一也の頭を軽く小突きながら怒る。
ウチは訳あってお母さんがいなくて、お父さんは働き詰めなので、ご飯は一也が、その他の家事は私が担当している。
「なんで突然クッキーとか作り出したわけ?」
「……あーんー…まあ色々ー」
「男でもできたとか?はっはっはっ」
「……………」
失礼にも爆笑している一也を尻目に黙々と生地を混ぜ続ける私。
返事をしない私に、一也がピタッと止まって、「え、まじ?」と頬を引き攣らせる。
「姉ちゃん、彼氏できたの?」
「……まあねー」
「……………へ、へー」
「あ、そう、頑張れよ」と言いながら冷蔵庫を開けてアクエリアスをラッパ飲みする。
「カレシ」なんていないし気配もないけど、
一也にちょっと腹が立ったので、意地はってみただけなんだけど、一也は想像以上にショックを受けていてなんか、我が弟ながら可愛い。
「……」
「一也」
「なに」
椅子に座って小さく口を尖らせている一也に、「うそ♡」と言えば面食らったような顔をして「一生姉ちゃんに彼氏なんてできねーよ!」と睨みつけながら言われた。
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◇性格の悪さは姉譲りです◇
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