《完結》 Maison de tempete 【ars】 (ページ21)

今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:243,146 hit

＊CEOに振り回されて　・　O ページ21

『は？』

　「先輩すみません、社長命令です」

『あぁ？』

　「ほら、先方も待ってますし、ね？」

そこら辺の女子に美しさは負けないと思う。

ちょっとだけ口は悪かったりするけど。
(ちょっとどころじゃないっすよ先輩！)

入社して早十年、

死に物狂いで必死に勤めて、

ようやく手に入れた社長秘書の地位。

今日でそれも3年目を迎えた、その夜。

季節は7月末。

クッソ暑い季節でただでさえ気が滅入っているというのに。

社長の接待に同席するはずが、直前になって社長が消え、

よくよく聞いてみると、

もともと私のお見合いの席だとかなんとか。

...クソッタレ。あのハゲ野郎絶対許さない。

どうやってこの埋め合わせをするか考えながら、

半ばあきらめて、障子に手をかけた。

「初めまして、大野智です。」

『初めまして、AAです。本日はお越しいただきありがとうございます。』

隣の後輩君の顔が、

先輩それじゃまるで接待だって嘆いてるけど、

そうよ！これは私にとっては接待なのよ！(と思うことにした)

「面白い方ですね、」

なんて、少しだけふにゃんとした顔で笑うお見合い相手は、

今をときめく新興会社のCEOで。

おまけにそれはうちの会社が契約を取ろうと狙っている会社でもあって。

なぜ、社長が、自分の娘にこの人とのお見合いをさせず、

私にさせたのかが理解できた。

「ではまた」

『大野さん、本日はありがとうございました。...とても、楽しかったです』

「こちらこそ」

当たり障りのない2時間を過ごして、

好感度は高いけどまぁ結婚はなーっていうポイントをちょいちょい残しつつ。

分かれる。

まぁ契約はほぼほぼ取れるだろうけど、

この人と次、なんて決してないものだと。

そう、信じて疑ってなかった。

そう。

疑っていなかった。