50*祝杯 ページ3
二宮くんが正式にアメリカに行けることが確定したのは、その次の日だった。
「二宮くん、おめでとう」
「A先生、ありがと」
いつもクールな印象の二宮くんだけど、嬉しくてしょうがないんだろう。
薄めのピンクに染まった頬っぺたが、ゆるってして、色白の肌に映える。
「しかも特待生だなんてすごいじゃない」
アメリカ行きのチケットも、高校の学費も、向こうでの生活費も、全部大学が負担してくれるらしい。
でもそれを聞いた二宮くんの表情が、少しだけ曇った。
「みんなそればっか…」
「当たり前でしょ、凄いことなんだから」
周りが聞いたら羨ましい事この上ない偉業なんだけど、
業績や称号にばかりしがみつく大人たちは、子供には受け入れ難いこともある。
「でも、二宮くんが好きなこと、思いっきりできるっていうのが私は嬉しいよ」
茶色いビー玉みたいな澄んだ瞳が、びっくりしたように大きくなった。
「それ…」
「だって二宮くんはやりたい事やるっていう権利を得たんだから、それが1番凄い事でしょ？」
「うん」
「それに素晴らしい環境が付いてくるだなんて、これ以上に良いことないんじゃない？」
「うん…」
ちょっとだけ目を潤ませた二宮くんの頭に、ポンっと手を置いて、撫でる。
「頑張ってる人に頑張って、っていうのは失礼だから、言わない。陰でずーっと応援してるからね」
「…ありがと」
顔を見られるのが恥ずかしいのか、うつむいた二宮くんの頭越しに、優しく微笑む翔くんと目が合う。
「俺は、1人で海外渡って自分のしたいこと全力でやろうとするお前を尊敬するし、誇りに思う」
翔くんの手と私の手が、二宮くんの頭の上で重なった。
「「おめでとう」」
二宮くんの目から、ポロッと涙がこぼれた。
その日は私も翔くんもずーっと心があったかくて、
ちょっと奮発して、って言ってもお手頃なバーだけど、甘めのカクテルで乾杯した。
幸せだね、教師で良かったね、なんて言葉は言わない。
同じことを考えてるんだ、ってことくらい、顔を見ただけで分かるから。
お酒はそんなに飲んでないはずなのに、別れ際にハグを交わしてたのだって、
お互い良かったね、っていう合図、のはずだ。
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とも(プロフ) - 初めまして。とても素敵なお話で…ちょっとうるうるしちゃいました。智くん担の私的には…智くんと…って思ってしまいましたが。翔くんの甘く切ない気持ちが心に響きました。 (2020年6月30日 13時) (
レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
ゆうにゃん - めっちゃ楽しみです(≧∇≦) (2020年5月19日 1時) (レス) id: 8772c16e2a (このIDを非表示/違反報告)
璃夢(プロフ) - sＨoさん» sHoさん、コメントありがとうございます。見つけて、読んで下さってとても嬉しいです！卒業式のシーンは、書いている私も泣きそうになってました笑 これからもどうぞよろしくお願いいたします(^ ^) (2020年4月19日 15時) (レス) id: bc361fa2d6 (このIDを非表示/違反報告)
sＨo(プロフ) - はじめまして。昨日、ふと、この作品に出会い…読み終えました。卒業式では一緒に泣きながら（笑）素敵なお話、ありがとうございました。 (2020年4月19日 2時) (レス) id: 333f9c0231 (このIDを非表示/違反報告)
璃夢(プロフ) - みかぽさん» みかぽさん 完結まで支えてくださって本当にありがとうございました。seasonぜひ聞いてみてくださいね^ ^ これからもよろしくお願いします！ (2020年4月18日 22時) (レス) id: bc361fa2d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃夢
| 作成日時：2020年1月16日 22時
