空回り三角形【朱桜司】【完】

中途半端なお前に ページ28

朱)如月さん…？ご気分がすぐれないのですか？









声の大きさで彼が近づいてきているのが分かる







あぁやめて




彼の接近を認識すればするほど、苦しくなっていく。心臓を止めたくなるくらい…息をするのが辛い
拒絶の心情があふれる自分に嫌気がさす






？)A！





A)！









その声に顔を上げた
朱桜君のいる方向から聞こえたのに…素直にそちらを見ることができた









でも、私の瞳にうつったのは
その奥から走ってくる大事な幼馴染







浬)…またお前絡みかよ








朱)あなたは…









浬は朱桜君の横を通り過ぎ。私と目線を合わせてくれた
微かに乱れてる息に、どこから走ってきてくれたんだろうって考えてしまった









A)なんでっ…なんでいつも私が辛いときに来てくれるんだよっ…






浬)…知らね。泣き虫A、ガーデンテラスで姉さんが待ってる
…話でも聞いてもらえ








そっと私の涙をぬぐい、浬は背中を押してくれた
私は振り返らず、言われた通りガーデンテラスに向かった








〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜









朱)不法侵入ではないですか






浬)…ばれなきゃいいんだよ、んなの。







朱)また…彼女の為に…？







浬)お前に話があってきた
…中途半端な…お前に






朱)なっ！私のどこがッ！！






浬の言葉に朱桜の肩が揺れた。表情から少し怒りがにじみ出ていた
だが、向かい合っている無気力な顔した男にはこの男の感情などどうでもいいことだった






ここに来てる彼にとって大事なのは、…彼女の気持ちだけ






自分の言葉を理解していない赤髪の同学年に浬は笑った







浬)へ〜…自分の事なのに分かんねぇのかよ
…おい朱桜
感情に貧富の差はねぇぞ







朱桜は浬の言葉に目を見開いた





浬)お前の中途半端であいつを苦しめんのやめろ
…今のあいつの泣き顔はもう、見たくねぇんだよ





朱)…






浬)…他の奴を想って泣くアイツの涙をぬぐう俺の気持ちも考えろ
世間知らず野郎





朱)！！




朱桜は気づいてしまった






目の前にいる男の表情も…ここを去った彼女と同じように
辛そうにしていることを

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