暗い過去？無い無い。チートな異能力？無い無い。これはただの体質...のはず...ってか来んな！その２！

フラグ65 ページ26

『私の......身柄......』

国木田も押し黙った。
直接伝えるべきでは無いことなど百も承知だった。

他者が傷付くことは辛く、悲しい。
だがそれが自分のせいだと知った時、人は恐怖を覚える。

他者への心配を忘れ、配慮を欠き、極めて利己的な行動をとろうとする。


それほどまでに、責任というものは重い。



Aは目を閉じ、深呼吸をした。
何度か頷いて、まぶたを上げる。


Aの手が震えているのを太宰は見逃さない。
彼女も、恐怖でいっぱいなのだ。



『ぶっちゃけ怖いです。帰りたいです。
立ち向かうくらいなら、いっそ要求通りに動けば楽だろうなって思います。でも、それも怖いんです』


Aは困ったように笑う。


『どっちも怖いから、私は保障とアフターサービスが手厚い探偵社さんのお世話になります』


この前の事件の時もAは守られ、一晩泊めてもらい、結局ここまでお世話になっている。

間違っていないと言ってくれた敦さんがいる。
隣には背中を押してくれた太宰さんがいる。


その関わりの中でAは仲間というものの片鱗を見た。


だから。



「小花衣A」


電話の声が変わった。
機械を通して伝わってくる威厳。

太宰が社長、と思わず呟く程だ。


「生きる覚悟はあるか」


それはこの事件を生き延びる覚悟。
それは異能者として横浜で生き抜く決意。



『はい。元締めに会ったらグーで...いやグーは痛いのでパーで殴るぐらいの覚悟は出来てます』


Aは即答する。
その言葉で、未来は約束された。



「これより武装集団の鎮圧及び人質の救出を開始する」


ぎゅっ、と身の締まるような宣言だ。

太宰とAも互いに頷いた。




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