6.運命 ページ6
石畳の上にこつこつと上品な足音が鳴る。
ため息をつくAが手にしているものは、豪奢な刺繍が施された小さな包み。
遠征中であるいとこの紅炎から贈られたものだ。
「はあ、叔母上に渡せば良いものを」
姫様はお香がお嫌いのようですよ。従者が告げると、少年は「そういう問題ではない」と怒鳴り散らす。
先刻、いとこの紅明から至急本殿へ来るよう呼び出されたのだが、生憎、Aの住まう御殿は禁城本殿からかなり遠い。面倒そうに後頭部を擦り、大きなあくびをひとつ漏らす。
その後、本殿から出てきたAはそわそわと落ち着かない様子であった。
「おいガキ。何やってんだよ」
「無礼な!…ええっ?!」
中庭の中心部の橋の上。鮮やかな袖を靡かせる鯉を見下ろしていたAは、その青年を見るたび目を丸くし、日傘を持った従者の背中へ隠れた。池に波紋が広がる。
それは怯えた顔だった。
「ジュダルは死んだはず…」
「何でだよ」
「あ、あの男の姿が見えるのは私だけ?」
従者から奪い取った日傘を閉じて構える。傘の先端には鋭利な装飾が施されており、突き刺せば大怪我を負うだろう。
「亡霊には防壁魔法があるのだろうか」
「なに言ってんだ!」
「すり抜けるのかな!?」
結局防壁魔法で攻撃を塞がれたため、青年、ジュダルは生きているのだと確信したらしい。
バルバッド王国へ訪問中、何者かに襲われ瀕死の状態になった。マギである彼がそのような災難に遭うなどあり得ない。素晴らしく強き者が現れたらしい。先程までAはそう解釈していた。我が国のマギが失われた、という前提で。
「意識を失うほど重傷を負ったとか」
返された日傘を従者が持っている。
「私はシンドリア国王を迎える命を承けた。なので一時生家へ帰省する」
Aの故郷は沿岸の港町。そこは煌帝国の貿易の要でもあり、外交の拠点。一国の王を迎えるには、それなりの身分の者が必要だ。皇帝が動くわけにもいかないし、兄皇子らは戦に明け暮れ客人の接待をする暇はない。そこでAが帝都までの案内役として駆り出されたというわけだ。
「ついでとながら、その、あなたより強い方にお会いしたい」
Aがそわそわしていた理由だ。
自分が知っている中で最も力を持つ者を越えた存在。彼にとっては神のような崇拝すべきものなのだろう。
もちろんジュダルは良い気分ではない。
池を取り囲む赤い花が騒ぎ立てるように揺れる。生暖かな風は、これからの運命を暗示しているようだった。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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8
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西 - この方角に福があるはずです
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Seere(プロフ) - とまとさん» こうして温かいお言葉を頂くと、やはり占ツクに戻ってきてよかったなと感じます!2年も経ってしまうだなんて自分でもびっくりです(*_*)完結するまで長い時間がかかってしまうかもしれません。ですが、ふと思い出した際にぜひ覗きにいらっしゃってください♪ (2018年10月13日 21時) (レス) id: 602f4a06eb (このIDを非表示/違反報告)
Seere(プロフ) - とまとさん» ありがとうございます!もしかしたらお気づきかもしれませんが、実はこの作品「古の魔法~」の設定を少しだけ模したものです。思い入れがある作品なので、とまと様が覚えてくださってとても嬉しい反面、ちょっぴり恥ずかしいですね(^.^) (2018年10月13日 21時) (レス) id: 602f4a06eb (このIDを非表示/違反報告)
とまと(プロフ) - 他の作品ではありますが古の魔法のようにシリーズの時からSeereさんのファンです!占ツクに戻っていただいた時は本当に嬉しかったです!この作品を読みはじめて2年もたつなんて信じられないです…ゆっくりSeereさんのペースで作ってください。応援しています! (2018年10月13日 9時) (レス) id: 8aec95c110 (このIDを非表示/違反報告)
Seere(プロフ) - 流羅さん» とても嬉しい言葉を頂きました(*´-`)文章力はまだまだですが、もっと感動してもらえるような作品にするために頑張ります!応援ありがとうございます! (2016年12月28日 16時) (レス) id: 602f4a06eb (このIDを非表示/違反報告)
流羅(プロフ) - とっても面白いです!Seereさんの創る小説は全部語彙力があって、本当に感動するお話です。これからも頑張って下さい、応援しています…! (2016年12月27日 11時) (レス) id: 417529961c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Seere x他1人 | 作成日時:2016年12月24日 0時