いつか太陽を落とす【マギ】

3.忽焉 ページ3

草原の中。大きな騾馬の上では、Aの小柄さが目立つ。騾馬はそもそも家畜として使われる動物。その頑丈な体と高い学習能力は評判である。そのためAは騾馬を我が子のように愛で、好んで使っているのだ。

「A。ありがとう。お陰で部下達の危機は回避されました」

彼の姉、白瑛は生きていた。呂斎とその賛同者らは捕らえられ、国へ帰れば罪人として処罰が下されるだろう。
姉の危険を早馬で知らされ、自由のない兄の代わりにAが駆けつけた。すると先と期待はずれの様だ。
けれどAは安堵の笑みを浮かべる。

「姉上。ご無事で何より、本当に良かった」
「A、あなたも泣き虫なのですね」
「あれ、頬に傷が…！」

騾馬から飛び降り姉にしがみついた彼は、申し訳なさそうに涙を滝のように流してした。白瑛は優しく弟の頭を撫でて微笑む。

「前々から私は呂斎に疑念を感じておりました。気づいていたのに、私は何もできず…」
「良いのよ。こうして私は助けて頂き、Aからも応援をもらいました。私は幸せ者です」

いずこの殿方に援助を？お礼をせねば、とAは白瑛に問う。
演技だとしたら大したものだ。さて、本当の顔はどちらなのか。従者は目を細めて主を見つめていた。どちらにせよ、彼の従者である青年にとっての王の器ではないことは確かだ。
＿＿＿道理で、マギ殿から迷宮への誘いが来ないわけだ。
優柔不断な人間は人の上に立てるはずがない。それでもAの笑顔を知ってしまえば、決して裏切ることはできない。
従者は自身の決断力のなさに呆れたのか、静かに嘲笑した。

4.愚弟→←2.無垢

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