可愛くないキミの落とし方【降谷零/安室透】

16話 ページ17

『で、なんの用？まさか子供の前で怒りに来たの？』

｢蘭さんたちが呼んでる。説教はまた後だ｣

『は！？後であるの！？』


サーッと青ざめるAさんを前に、安室さんの方は笑っているわけではないが、なんだか楽しげに見える。

Aさんは舌打ちをしてから１度深呼吸して、この場を離れた。

あぁ…そっか、ほんわかお姉さんに切り替えないといけないもんな…

大変だなぁと思いながらぼんやり眺めていると、上から声が降ってきた。



｢彼女は僕の部下だよ。心配しなくていい｣

｢…仲悪いの？｣


先程からのやり取りを見てると、自然と出てしまう言葉だ。

けれど、なんとなくそうではなさそうだなという感じもしていた。

思った通り、安室さんは首を横に振る。


｢悪いわけじゃないさ。
警察学校時代からの仲間だし、なんだかんだ付き合いは長いよ｣

｢ふーん…じゃあ安室透の時に散々口説いてるのは演技？｣

そう聞くと、彼はちょっと困ったように笑った。



｢向こうはそう思ってるみたいだね｣


意外と素直に放たれた言葉に、思わず目を開く。

ってことは、やっぱり安室さんはAさんのこと…



｢僕ももうちょっと素直になれたらいいんだけどね。
安室透でいる時くらいしか正面から口説けなくて｣

｢へえ…安室さん、本命には奥手なんだね｣

｢君は恋愛沙汰も許容範囲かい？すごいね｣


安室さんはそう言って軽く笑った。

何においても完璧な彼も、本気で好きな人にはそうはいかないらしい。


うーん…確かにAさん鈍そうだもんなぁ…

はたから見てればバレバレな“安室透”の口説き文句も、毎回サラリと受け流している。

あぁ、あれは相手が演技でやっていると思ってるからか…


｢安室さん、このままじゃAさん絶対気づかないよ…｣

｢…僕もそう思う｣


まぁ…これに関しては俺の出る幕はないな。

頑張れ安室さん。心から応援してる。

でも普段からかわれてるぶん、これからはちょっと仕返しさせてね。

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