王と騎士とお姫様【月永レオ】 (ページ6)

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隠れ姫② ページ6

"音楽科のお姫様"

最初にそう呼んだのは誰なのか。
この学院に来て2年経とうとしてる今でもわからない。

ただ、1年のとき、全校集会が始まる直前まで、体育館でピアノを弾いて教頭せんせーに怒られたあの日から、そう呼ばれてることは知っている。

あの時はとてつもなく怖かった。
君の音楽性は天才なみだけど〜って褒められたかと思えば、こんな直前まで何をしてるんだって怒られたり。

あの教頭は喜怒哀楽がコロコロ変わるのだ。
だからこそ、面白いし怖い。

音楽と面白さがあれば生きていける。
そーゆー人間なのです、あたしは。

んで？なんだって？

『音楽室が使えない…！？』

「そうなんだよねぇ〜…春休み終わっても改装工事は続くかもしれないからね。」

『そ、そんなぁ…少しでもいい環境で練習したかったのに…』

ガックリ肩を落として、他に練習できる場所はなかったか…と思考をめぐらす。

家にだってそこそこ練習できるものはあるけれど、私立の学校に適うほどではない。

「うーん…君は音楽がないと死んでしまいそうだしね…。あぁ、そうだ。アイドル科の校舎で練習したらどうだい？あそこは校舎が綺麗だから滅多に改装とかしないだろうし。あっちの先生に知人がいるんだ。紹介しよう。」

控えめに言って神様に見えた。

『か！か、！神様！！！！』

警備員さんの手を両手でがっしり掴んで上下にブンブンと振ると、彼は困ったように笑う。

するとすぐさまアイドル科の知人先生に電話をしてくれてるみたいで、"こっちの音楽科のお姫様がね〜"と軽く話し始めて数分後、こちらをバチコン☆とウィンクしグッドポーズをしてきた。

お茶目。

。
。
。

「貴女が音楽科のお姫様…っと失礼。お名前は確か、神無月Aさん…でしたね？」

5分くらいまでば、なぜか普通校舎から眼鏡をかけたいかにも堅物そうな先生が歩いてきた。

『あ、ええっと、はいそうです…？なんで普通校舎から…？』

「ああ、あなたは意外にもそこを気にするのですね。普通校舎とアイドル校舎は塀や受付で区切られてるだけで、正門をいちいち出入りしなくても来れるんですよ。」

知らなかった。
そんなあたしにふふん♪と少し自慢げに話してくるこの先生はそもそも誰？

「私の名前は椚章臣。アイドル科の教師です。」

メガネをクイッとあげた先生は、イソイソとアイドル科音楽室へと案内してくれる。

忙しいんだろうな、この人。