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パートが終わり、親友の咲恵とカフェで落ち合う。先に暖房の効いたカフェのテーブル席で待っていると店員さんがコーヒーを運んで来たタイミングで、咲恵がやって来る。
ハーッと息を吐きながら椅子に腰掛けると、近くの店員さんにキャラメルマキアートを頼んだ。
「お待たせ」
「待ってないから、大丈夫」
「そう。で、どうしたの?」
どうしたの?と問われ、私はコーヒーカップを持ったまま固まってしまった。
「葉瑠?」
「あ、えっと…」
「何?また旦那さんと何かあったの?」
目を半分開け私を見やる。慌てて、私は首を左右に振り言った。
「違うの、あ、違わないけど、その〜」
「何?」
「昨日、一夜を共にして」
「まだ一夜を共にしてなかったの。どうだった?」
「幸せでした」
「そりゃよかった。でも問題あったんじゃないの?」
「問題というか、その…」
「何よ。さっさと言いなさいよ」
咲恵がイライラしたようにツメの先でトントンと机を叩く。
咲恵の脇では店員さんがやって来て、注文のキャラメルマキアートやお冷や、おしぼりを置き「ごゆっくりどうぞ」と離れていく。
店員さんの背中を見送ってやっと私は口を開いた。
「普通はさ、その次の朝ってどんな顔するの?」
「は?」
「なんか、昨日の情事を思い出す度に恥ずかしくなって、顔も合わせられなくて」
「亮介さん、可哀相」
「え、なんで?」
「どんな朝だったの?」
今朝の事を思い出す。今朝はいつもの様に、亮介さんより早く起きてキッチンへ。その後すぐ亮介さんは起きてきたけれど、外を走るため家を出た。
ランニングから三〇分ばかしで戻ってくると、いつもの様にシャワーを浴びる。そして身支度をする頃にはテーブルに朝食の準備がしてあるので二人で朝食を摂り会社に見送った。
その間、私はずっと亮介さんと目を合わせていないし話も「おはよう」と「行ってらっしゃい」くらい。
そう話すと、咲恵が眉間に皺を寄せまた言った。
「亮介さん、可哀相…」
と。
二度目の方が感情が籠もった言い方だ。
「だって恥ずかしい」
「亮介さん、傷つくだろうな」
グサリと咲恵の言葉が鋭利なナイフとなって私の心に突き刺さる。
「記憶なくしちゃったから、葉瑠がどれだけ恥ずかしがり屋か知らないんじゃないかな」
ハッと私は咲恵を見る。
そうだ、亮介さんは私がどれだけシャイか忘れてしまっているのだ。
「正直に言うのよ!亮介さんに」
私はコクンと頷いた。
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豆腐戦士(プロフ) - マヒロさん» マヒロさん、コメントありがとうございます!私の駄作品を読んで頂いたそうで、大変嬉しいです(^^)御幸くんの小説については本当にお待たせします。まだ書いている作品があるので。ご理解頂けると幸いです(^^)今後ともよろしくお願い致します! (2017年8月1日 18時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - すごい嬉しかったです!お忙しいとは思いますが頑張ってください。楽しみにしています!(途中で切れてしまいすみません!) (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
マヒロ - 長文、失礼します!ダイヤの小説全部読みました。僕のお気に入りもパシリになる小説で、御幸くんつらいなぁ…と僕まで悲しい気持ちになりました。ここにあったコメ読んだときに御幸くんの高校生の話から見れると書いてあり、御幸くんに幸せになって欲しかったので (2017年7月31日 22時) (レス) id: 97c48ff0e2 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» 倉持くんのプロ野球の話で主人公の性格を変えたのは、おしとやかさより母親を全面に出したいと思ったので(汗)分かりました。御幸の話では性格変えずに書きますね。ご意見ありがとうございます。今後も作品共々よろしくお願いします(*´ω`*) (2017年7月23日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ココア - もし悩まれたらこの意見を思い出していただければいいなと思います!豆腐戦士さんが連載されるのを心待ちにして待ってます!他の作品も頑張ってください!いつまでも応援していますね! (2017年7月22日 19時) (レス) id: 02b943e900 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2016年10月22日 15時