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それは、雨の降る放課後のこと。
部活に行こうとしたら、昇降口で膝を抱える一人の女子生徒の姿。
気になって見れば、それは紛う事なき好意を抱く彼女の背中。
「よう、尾花」
「あ、御幸くん。これから部活?」
「まぁ。尾花はこんなとこでどうしたんだ?まさか、倉持待ってたり?」
嗚呼、また俺自分が傷つくこと言ってる。
けどそんなからかいを交えないと、まともに尾花に話しかけることなんて出来ない。
「なんでそこで倉持くんが出て来るの?違うよ、傘忘れたから止まなくても、弱まらないかなって待ってるの」
チラリと傘立てを見た。
そこには倉持に無理矢理持たされた俺の傘が1本、立っている。
貸そうか、どうしようか迷っていると急に尾花が立ち上がった。
「よしっ。今なら走って帰れる」
「は?バッ」
そう止める俺の横をすり抜けて、沢村みたく猛ダッシュで駆けていく尾花。
けど外に出た瞬間、濡れた床で脚を滑らせ背中からスッテーンと漫画みたいに転ぶ。
慌てて俺は尾花に駆け寄った。
「大丈夫かよ」
「イテテ…。見られちゃったね、恥ずかしい」
そうヘラヘラと笑う尾花から、俺はそっと視線を外す。
「大丈夫、俺からは見えてない」
俺の発言に尾花は一瞬、キョトンとした表情を浮かべていたが、はっと息を飲み立てた膝を寝かせスカートを抑える。
「ヤ、ヤダ。本当?見えてない?」
「本当だって。見えなかったし、見てない!」
はず…。と真っ赤になった顔をパタパタと手で扇ぎながら立ち上がる尾花。その姿を横目で見守っていた訳だが、立ち上がる仕草から尾花の異変に気づく。
「足、捻った?」
「え?ちょっと痛いかな〜?ってだけ。大丈夫、捻ってない捻ってない」
「ならそこ普通に歩いてみ?」
二、三歩、歩いて平静を装うが右足を捻ったのは一目瞭然。
倉持にヤキモチ妬かれたり、周りから誤解されるかもしれないがこれは緊急事態。
そう自分に言い聞かせ、尾花の前で背を向けしゃがむ。
「ん、」
「え?御幸くん、どしたの?」
「負ぶってうちまで送る」
「そんな、悪いよ。御幸くん、部活だってあるだろうし」
「どうせこの雨だから室内練だし。捻って無理に歩くのもあんまよく無いし」
「…御幸くんのファンに殺されないかな?」
「俺のファンはそこまで恐ろしくねえよ」
そう冗談を言うと、尾花は可愛らしくクスリと笑って大人しく俺の背に乗った。
「重くない?」
「平気」
差した傘がパラパラと雨を弾いた。
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豆腐戦士(プロフ) - ホイップクリームさん» お久しぶりです(^^)この先、どうなるんでしょうね(笑)あまり先の展開を決めてないです←期待に添えられるよう、頑張ります! (2017年11月3日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - お久しぶりです! 御幸くんやっぱりいいですねー! 倉持くんとどんな関係なのかがとても気になってます(笑) それも含めこの先がとっても楽しみです!応援しています!! (2017年11月3日 15時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ホイップクリームさん» ホイップクリームさん、初めまして!私の作品読んで頂いたようで光栄です!ありがとうございます。更新、まちまちになりますがどうぞこれからもよろしくお願いします! (2017年10月22日 14時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - こんばんは!! 豆腐戦士さんの作品大好きです! 今回の作品は私が好きな感じのなのでとっても楽しみにしています!! 掛け持ちも沢山あり、私生活も大変だとは思いますが頑張ってください!! (2017年10月21日 22時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» ココアさん、長らくお待たせしました!期待に添える作品になればいいのですが…。今後ともどうぞよろしくお願いします! (2017年10月15日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年10月15日 18時