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「倉持く〜ん!」
特に約束した訳でもなく、倉持と二人購買に向かっていた。
その途中、倉持を見かけた尾花がそう呼んでピョンピョン跳ねながら手を振る。跳ねる度、両サイドで束ねた髪も跳ねてうさぎみたいだった。
「う−っす。ボヤ騒ぎ起こさなかったか?」
「もうっそんなドジしないし。これ、約束のカップケ−キ。倉持くん、どうせ誰にも貰えないだろうし」
「最後の余計だろ。けど、サンキューな」
ニコニコと笑い合う二人を横目に、俺は心の中で溜息を吐く。
いつもなら、尾花の言葉に対して「俺の分けてやろうか」とか「寂しい奴だな」と、嫌味の一つ言えるだろうが、今そんな余裕がなかった。
今目の前に広がるこの光景を、目に入れたくないし記憶にも留めておきたくない。
数ではきっと倉持に負けない。けどやはり、俺は甘い物が嫌いだろうが、好きな人からのケ−キが欲しい。
そっと視線を逸らし、この場から立ち去ろうとすると、目の端にピョコピョコ跳ねる髪の毛が見えた。
すると次の瞬間、尾花が顔を出して俺の前にカップケ−キが入った透明の袋を差し出す。
「これ、御幸君に。甘いの苦手って聞いたから、チ−ズケ−キにしてみた!要らなかったら、倉持君にあげるなり捨てるなりして良いから」
「あ、えっと…」
「あ……お節介だよね?ごめ」
「ありがとう!すげぇ、嬉しい」
心臓がドキドキと跳ねていた。
身体中がポッポと熱くなるような、そんな気分になるのは初めてだ。
受け取ると、尾花は嬉しそうに笑った。
はにかみ笑いが可愛らしい。
また俺の体温が上昇する。
「感想、聞かせてね」
手を振り、去って行く尾花。
迷いながら、手を挙げた。しかし、すぐ角を曲がったので見えなくなる。
気まずく感じながら、手を降ろすと倉持からの視線を感じた。
「なんだよ」
「なんでもねぇよ。さっさと飯食うぞ」
「あぁ」
尾花から渡されたカップケ−キに視線を落とす。
誰から貰う差し入れより、尾花から貰うこのカップケ−キがこんなにも嬉しいものだとは思わなかった。
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豆腐戦士(プロフ) - ホイップクリームさん» お久しぶりです(^^)この先、どうなるんでしょうね(笑)あまり先の展開を決めてないです←期待に添えられるよう、頑張ります! (2017年11月3日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - お久しぶりです! 御幸くんやっぱりいいですねー! 倉持くんとどんな関係なのかがとても気になってます(笑) それも含めこの先がとっても楽しみです!応援しています!! (2017年11月3日 15時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ホイップクリームさん» ホイップクリームさん、初めまして!私の作品読んで頂いたようで光栄です!ありがとうございます。更新、まちまちになりますがどうぞこれからもよろしくお願いします! (2017年10月22日 14時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - こんばんは!! 豆腐戦士さんの作品大好きです! 今回の作品は私が好きな感じのなのでとっても楽しみにしています!! 掛け持ちも沢山あり、私生活も大変だとは思いますが頑張ってください!! (2017年10月21日 22時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» ココアさん、長らくお待たせしました!期待に添える作品になればいいのですが…。今後ともどうぞよろしくお願いします! (2017年10月15日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年10月15日 18時