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プロロ−グ ページ1

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身体中から血が引いていくような気分は、人生でいくつ体験するのだろう。

そう滅多にはないことだと思いたいが、俺は今まさに生きた心地がしなかった。血が身体から抜けていったような、そんな感覚。

何故かと言うと、大切はスコアブックを無くしたからだった。

いつも持ち歩くようにしていたのに、昼休みに見ようとして机の中にも鞄の中にもなかった。

俺の脳裏に浮かぶのは、あの恐い片岡監督の顔。

「校庭、何周すれば良いんだよ…」

はぁっと溜息を吐いたその時、

「御幸君」

と声をかけられた。見れば、同じクラスの尾花が立っていた。

彼女は清純という言葉がピッタリ似合っていた。長いサラサラした髪に、化粧っ気のない綺麗な顔立ち、クラスメイトから信頼が厚く委員長もこなしている。

話した事はそれほどなく、挨拶を交わすくらいで俺にとってはクラスメイトという関係以外何もなかった。

そう今日までは。

「何か用?」

「うん。これ、もしかして御幸君のじゃないかなって」

分厚い紙の束。それを見て直感した。

俺が探していたスコアブックだと。

「俺の!サンキュー、探してたんだ。どこにあった?」

「選択教室。この前、御幸君がこれに似たの見てたなって思ったの。良かった、持ち主が見つかって」

手を叩いて、尾花は笑った。

女の笑顔は何人も見てきたけれど、こんなにキラキラした笑顔を浮かべる女性を見たのは初めてだった。

「…い、」

「え?」

「あ、嫌。サンキュー。本当、助かった。走らされずに済みそうだわ」

「走らされる?なんかよく分かんないけど、野球部ってやっぱり厳しいんだね」

「まぁ、他よりは厳しいだろうな」

「頑張ってね!御幸君って、扇の要なんでしょ?格好いいよね」

「ありがとっ」

いつもなら、誤魔化すように笑って条件反射の如くサンキューと言うのだけれど、この時は本当に嬉しくて心から感謝の言葉を口にした。



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設定タグ:ダイヤのA , 御幸一也   
作品ジャンル:恋愛
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豆腐戦士(プロフ) - ホイップクリームさん» お久しぶりです(^^)この先、どうなるんでしょうね(笑)あまり先の展開を決めてないです←期待に添えられるよう、頑張ります! (2017年11月3日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - お久しぶりです! 御幸くんやっぱりいいですねー! 倉持くんとどんな関係なのかがとても気になってます(笑) それも含めこの先がとっても楽しみです!応援しています!! (2017年11月3日 15時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ホイップクリームさん» ホイップクリームさん、初めまして!私の作品読んで頂いたようで光栄です!ありがとうございます。更新、まちまちになりますがどうぞこれからもよろしくお願いします! (2017年10月22日 14時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)
ホイップクリーム(プロフ) - こんばんは!! 豆腐戦士さんの作品大好きです! 今回の作品は私が好きな感じのなのでとっても楽しみにしています!! 掛け持ちも沢山あり、私生活も大変だとは思いますが頑張ってください!! (2017年10月21日 22時) (レス) id: 05e300014f (このIDを非表示/違反報告)
豆腐戦士(プロフ) - ココアさん» ココアさん、長らくお待たせしました!期待に添える作品になればいいのですが…。今後ともどうぞよろしくお願いします! (2017年10月15日 22時) (レス) id: 74fa4ef45e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:豆腐戦士 | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年10月15日 18時

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