【ジョジョ4部】蠱惑的インクルージョン (ページ5)

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その彼がくるりと振り向いて、仗助達に手を振っている。寄り道を取り付けることに成功したらしい。

仗助は康一と目配せして、一緒に歩き出した。
友人の目は、億泰とは別の緊張感で光っていた。

「しょ、紹介するぜ。ダチの仗助と康一だ」
「ど、どうも」
「っス」
「はじめまして、じゃあないんですよね？」

天崎A。
億泰が言っていた通りの名を告げた彼女は、康一と仗助を見て言った。

どうやら億泰は昼休みの出来事を引き合いに出して彼女を捕まえたらしい。

「お詫びなんていいのに。ぶつかっただけだし、あれは私も悪かったもの」
「まあこれも何かの縁じゃないかな。ほら、クラスは違うけど同じ1年だし！」

億泰は会話を康一に任せることに決めたようで、しきりに手汗をボンタンで拭っている。

仗助もこちらから話しかけることはせず、女子生徒の観察に集中した。

遠巻きに見たときはよく分からなかったが、異性慣れしていない億泰が緊張するのも納得の顔立ちといえる。けれどどこかぼんやりした瞳が少し不気味に見えた。

と、視線を感じたのかAがくるりと仗助を仰ぎ見た。
瞬間、彼女の背後に分身が姿を現した。

(やっぱり間違いねェ、スタンドだ！！)

彼女とは対照的に、スタンドはぎろりと鋭い視線を仗助に突き刺している。
仗助の記憶は間違っていなかった。
冷たい黄色。満月の色。

スタンドはまたも数秒のうちに消えてしまった。
圧迫感のなくなった視界の奥で、今にも叫びそうな億泰を康一が必死に抑えている。

まだこちらにスタンドが見えることを知られるわけにはいかない。

スタンド本体のA、彼女は明らかに異常だった。

自分のスタンドを現したにも関わらず、きょとんとした顔で閉口する3人を見回している。まるで、仗助達が何を警戒しているのか、何が起こっているのか全く分からないとでも言うように。

(グレート。マジに何も気づいてないならただの間抜けだが、俺らを試してるってなら話は別だぜ)

億泰が誘ったアイスクリームパーラーで、4人それぞれが好きなフレーバーを注文する。

挙動不審な億泰と無言の仗助をごまかすように、康一が社交的に会話に努めてくれている。
彼女も柔らかな表情でそれに答えていたが、スタンドが出現する間隔がだんだんと短くなっていることに仗助は気付いていた。

偶然にも仗助や億泰と帰り道が一緒だったので、ついでに送っていくと伝えて町の中心を離れる。