【海に愛されし者〜出会いと優しさ〜】 (ページ28)

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｢俺たちはつむぎの事をまだよく知らない。そのせいで傷つける事だってあるかもしれない。そうなるくらいなら距離を置こうと思ってい。｣

｢…………うん…｣

｢だが……｣

1度言葉を切った事を不思議に思い俯いていた顔を上げると、いつの間にかすぐ近くにいたシャンクスに抱きしめられた。

突然の事で驚いて固まっているとホンゴウとベックマンのため息が聞こえてきた。

完全にすっぽりと抱きしめられているので2人の顔は見えなかったが、明らかに呆れている感じだった。

｢……シャンクスっ？｣

｢…………誰に何と言われようと、昨日の言葉は嘘偽りのない本心だ。｣

そう言ってまた額に口付けを落とす。

なんだかくすぐったくて、暖かくて、私の心は満たされいた。

｢つむぎ、ちゃんと成人するまでは頭に手は出させねぇからな？｣

｢頭も節度をわきまえてくれよ。｣

まるで保護者のように念を押す2人を見て少し笑えた。

こんな人達が家族だったら、どれだけ幸せだったのか。

｢ありがとう…｣

｢｢｢っ！｣｣｣

あまりにも嬉しそうに笑うつむぎに、目を見開く3人。

たったそれだけの事なのに、3人にはそれが何物にも代えがたい宝に感じた。

つむぎの喜ぶ顔も、嬉しそうに笑う顔も、この先何があっても守っていくと心に誓った3人だった。

つむぎが快復してしばらくはみんな過保護になり。

そして当初からの目的であったつむぎの治療も始まっていた。

つむぎの身体に負担のかからない方法として薬で治していくしかなかったが、それでも大丈夫だと言うつむぎ。

本当は直ぐにでも消し去ってしまいたいだろう。

思い出さないなんてことは無いはずだ。

その度に傷ついて、悲しい思いをするだろう。

｢そう言えばよ。……なんでそんなに俺たちを信用できるんだ？｣

薬を塗り終わってずっと疑問だった事をつむぎに聞いてみたホンゴウ。

服を着なおしてホンゴウに向き直るつむぎは何でもないような顔をしていた。

｢…………優しかったから。｣

｢は？｣

その答えは予想外だった。

しかし今思えば、初めはベックマンにかなり脅えていたはずのつむぎは直ぐにそうでも無くなっていた。

シャンクスに関してはそれよりも早くに心を許していたと思う。

つむぎの心情に何があったかは分からない。

だが最初こそ怯えていたものの、つむぎはベックマンやホンゴウそして他のクルー達を否定するような事は1度もなかった。