【22】人影/A ページ22
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雪が降る中、そのまま歩みを進める。
だんだんと道路を白く染めていくソレ。
「……積もりそうだな」
早く帰ろ、と心の中で呟いて、歩みを早める。
通りかかったのは暗い公園。
既に暗いその園内に、
1つの人影が見えた。
それが見えたのは、その彼がベンチに横たわっていて。
その上に、白い雪が降り積もっていて、電灯に照らされていたから。
「……変な人」
なんだか、嫌な感じを覚えながら、
でもきっとこのままあの人を放っておいたら凍死してしまうだろう、と一歩ずつ、ゆっくりと近づく。
近づいて分かった。
「……この寒い中でTシャツかよ…」
その、横たわっている人が身に着けているのはTシャツ一枚。
俺は、全部合わせて上半身4枚くらい来ていても寒いのに。
「……まじで、やべぇんじゃないのか?あの人……」
ポケットの中の携帯を、いつでも取り出せるようにしながら、少し歩くスピードを早めた。
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「……ぇ…」
「…大………ちゃん?」
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積もった白い雪の下からのぞく、茶色の髪。
細い身体。
それは、彼――大野智のものだった。
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「大ちゃんっっ!!」
叫びながら、いや半ば絶叫で駈け寄る。
彼の顔を覗き込むと、真っ青で血の気がまったくなかった。唇も紫に染まっていて、震えている。
目は固く閉じられていて。
―――死んでいるんじゃないか
そう思わせるほど。
「ちょっ……冗談ヤメテよ……
おいっ……!大ちゃんっ!」
思い切り肩を揺さぶると、ふるり、と彼のまつ毛が震えて、雪が落ちる。
「……ん……ぁぁ……あ……ば…」
「大ちゃんっ!!分かる!?雅紀だよ!?」
「ぁ……ぃい……ば……ちゃ…」
唇が震えているせいで、その唇から紡がれる言葉も震えている。
やばい、俺はそう判断して、寒さも忘れ自分のダウンを彼にかけた。
「大ちゃん、とりあえず家に行こう!?場所教えて!送るから」
「っ…!ぃ、イヤ…!家…ヤダ……」
俺がそう言った途端、彼が体を震わせて拒絶。
なんか…あったのか?
でも、ここで彼に無理をさせるのはよくない、
俺はそう判断して
「…じゃあ、俺の家。
俺の家でいい?」
そう、大ちゃんに提案して、
彼が小さく頷いたのを確認すると、軽いその体を抱き上げた。
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arashi_yama1017(プロフ) - SOって後半書いてたのでこれは付き合うんじゃないかと思ってましたが違ったみたいですね。たいていCPが2つある時後半とくっつくと思っていました、後完全なる翔くんの片思いじゃないですか?すいません。山しか呼ばないもんで。 (2016年8月16日 3時) (レス) id: b2b1bc4496 (このIDを非表示/違反報告)
まゆか - すごく、感動しました!泣けました!このような、素敵な作品を作っていただいて。本当にありがとうございます! (2015年6月28日 14時) (レス) id: 3774ee6bdc (このIDを非表示/違反報告)
大宮sk♪(プロフ) - 智好き゚(゚´Д`゚)゚和好き゚(゚´Д`゚)゚大宮好き゚(゚´Д`゚)゚感動しました!! (2013年9月12日 23時) (レス) id: e3e9052229 (このIDを非表示/違反報告)
みや(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても柔らかな素敵なラストに、胸が熱くなりました。けいさんの温かさが沁みいるような、素敵な時間をありがとうございました。また、けいさんの新しいお話しと出逢えるのを楽しみに待っていますね。ありがとうございました。 (2013年5月20日 21時) (レス) id: 5b5e567b32 (このIDを非表示/違反報告)
智歌(プロフ) - けいちゃん、完結おめでとう^^ うぉーついに完結か……、今までありがとうございました!!おーみやさん達が幸せになれてよかった……// にやにやしながらPCに向かっております(笑) 次も楽しみに、首を長くして待ってます← ではでは!! (2013年5月20日 21時) (レス) id: e8f0ec24b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:けい | 作成日時:2012年12月31日 14時