【短編集】懐中時計のダーツ盤【あんスタ】 (ページ9)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:9,865 hit

3 ページ9

「ん～、上から水浴びたのって久しぶりかも。ありがとな！」
「……いえ」

前髪はシャワーついでにうちの使用人にでも切られたんだろう、彼本来の姿がそこにはあった。黄昏を絵の具で溶かしたような、一つに結わえられた綺麗な色をした髪に、切れ長の宝石みたいなライトグリーンの瞳。

「あなたって、そんな顔してたのね」
「ん～……このタイミングで戻るとは思わなかったけど」
「なんて？」
「何も言ってない！うん、おれ顔だけはよく褒められてるしなぁ」
「そうね、顔だけは綺麗かも。身につけてるものは汚いけど」
「いちいちぴぃちく文句つけてきてうるさいなぁ、お前はいつも朝起こしにくる小鳥か？……うん、綺麗な声してるし、我ながら良い例えかも！」

不満げに私を少し睨み付けると、急ににこにこと可愛らしい笑みを浮かべる彼に思わず表情が緩む。なんて喜怒哀楽の激しい人なのかしら。

「でも別にあれだろ、服なんて関係ないじゃん、正直着れてればいいなって思ってる」
「あなたねぇ……」
「お前は全体的に綺麗だけどな！」
「……あ、なた、みたいのに褒められたって、」
「わははは！散々言ってたクセにそこは素直に照れるんだな！うん、やっぱ面白いよオマエ、結婚しよう！」
「いやよ！もう、あっちいって！」

食事を終え、寝室まで付いてきた彼を床に転がして夢を見た。その翌日彼の従者という者が迎えにきたけど、あなたって王様だったのね。