107話 ページ11
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『A...ごめんね.....』
それだけを言い残して堕ちて行く母。
そんな私を嗤ってぐるぐると記憶が混ざり始める。
心臓が締め付けられ、上手く息が吸えない。
...ああ、そうか。
この症例を診るのは、
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五十嵐「...う先生...?安藤先生!?」
A「...ぁ、い、がらし さん...」
噎せこんだ後に「すみません」と呟いた。
五十嵐「大丈夫ですか...?」
A「...大丈夫です!ちょっと寝不足が続いているだけなので...」
五十嵐「.....」
心配そうな表情をする五十嵐へ笑みを向けてから続ける。
A「コアが不明瞭...これは再撮すべきですよね...」
五十嵐「...はい。これに近いかと...」
五十嵐はタブレットで海外の医療記事を表示させ、Aへと見せる。
小野寺「.....」
この時、2人は小野寺に後ろからタブレットの画面を見られていたことに気が付かなかった。
A「...やっぱり...五十嵐さん、オーダーを出します。今夜お願い出来ますか?」
五十嵐「...!...はい!」
そう言って頷き、小さく口元を緩めた。
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あれから数時間が経過し、時刻は既に定時を回っていた。
そろそろ到着するであろう蛭田さんの検査の準備を進めていると、ふと先程の伊東さんの様子を思い出した。
五十嵐「.....」
また、苦しそうだったのだ。
僕は彼女の過去の一部を知っている。
...しかし、恐らくそれはほんのひと欠片にすぎないのだろう。
彼女は僕が"コアが不明瞭"と呟いたら酷く反応を示していた。
僕らが蛭田さんへ今疑っている症例と彼女の過去に何か関連があるのだろうか...
思索を深めながら、一度モニターで画像の確認をしておこうと放射線室へ向かう。
薄暗い通路を抜け、角を曲がろうと一歩足を踏み出した。
「きゃあああああ!!!!」
五十嵐「ぅわああああ!?!?」
突然目の前で叫び声をあげられ、思わず僕も叫んでしまった。
五十嵐「...ひ、広瀬さん...?」
広瀬「.....へ...あ...い、いがらしさぁん.....」
そこにいたのは半泣き状態の広瀬さんだった。
何故あんなに驚いたのかよくわからないまま僕は電気を付ける。
すると机の上に何やら紙切れが置いてあることに気が付いた。
"うちの病院1人当直の時に結構見ちゃう人多いから気を付けてね。黒羽"
僕は若干苦笑いして広瀬さんの怯えように納得した。
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奏奏奏(プロフ) - きぇぇぇぇ!!さん» ありがとうございます!これからも頑張っていきます! (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
奏奏奏(プロフ) - レナさん» ありがとうございます!励みになります´`* (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
きぇぇぇぇ!! - ラジエーションハウスは大好きな作品(?)なので頑張ってください!(?) (2019年7月30日 17時) (レス) id: 5d428d39a9 (このIDを非表示/違反報告)
レナ - 待ってました。これからも頑張ってください。 (2019年7月16日 22時) (レス) id: 869c734d75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奏奏奏 | 作成日時:2019年7月16日 19時