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戯言。 ページ32




"俺、いつか人生の中でこの人は手離したくないっていう女性を見つけたらネックレスあげるって決めてたんだよ"



あの夜、彼女にそう告げた自分の言葉が蘇る。



そう、生と死の境界線を残酷に引いた金属の音は紛れもなく俺が少女にあげたネックレスだった。




「ばか、なんで置いてくんだよ…」




まだ昨日箱から出したばかりだから汚れひとつ無い新品。



「何で、手離したくないって思った人って直ぐに消えてしまうの…?」




こんなネックレス、捨てても良かった。
公園のゴミ箱に放り投げても良かったのに。



訳の分からない夢のような現実なんて、捨てちゃえばよかったのに。



俺はそのネックレスを自分の首につけた。


何故かは分からない。



ただ、少しでも彼女の生きた証を自らが持っていたかっただけかもしれない。




このネックレス(証拠)がないと、きっと君はこの世に存在しなかったことになってしまう。






人は、2度死ぬと言われている。

1度目は物理的な死、
2度目は誰かの心の中でも生きることが出来なくなった時の心理的な死。





つまりは俺が少女の存在を忘れてしまえば黒澤 Aは無論この世に存在しなかったことになるのだ。




そんなの嫌だ。

夢のような戯れだったとしても、それは確かに存在していたんだから。



俺だけが知っていればいい。



「…そうだよな?俺とお前2人だけの思い出だもんな…?」




冷たい彼女の頭を撫でた。
そうすれば君は喜ぶから。



ゴロゴロ喉を鳴らしてくれるから。








彼女を抱いて、その日はひたすら泣いた。



大声を上げて人目も憚らずに泣いた。



そんなみっともない一日を過ごした。









次に落ち着いた時ふと周りに視線を向ければ雨は止んでいた。




何日ぶりの太陽だろうか。





その光は俺が大好き(・・・・)で、ずっと待ち望んでいたものだった。









なのに、晴れを憎らしく思った。









俺は気が済むまでAを撫でた。







そして公園で─────────────









一眠りしてしまう。








もう、雨の音はしない。





雨は降らない。





雨降りの日は、世界が狂う




そんな戯言も通用しない現実へと俺は引き戻される。









夢ではAさんが俺に手を振っていた。




"ありがとう" と言うのだ。







そしてやはり君は、








この世に存在する全ての物の中で1番綺麗だ。

晴天。→←悲壮。



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作品ジャンル:恋愛
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眠民。 - 颯桜さんの作品は、涙が出るほど切ないお話が沢山あるけれど、でもその涙って美しいと思うんですよ‥(語彙力)今回のお話も泣きました!!笑 (2月8日 18時) (レス) @page36 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 余白の落書き。さぶさん» 神だなんて恐れ多い☺️楽しんで頂けて幸いです (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - ネコ日和。さん» ありがとうございますとても嬉しいです😢‪🫶🏻 (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
余白の落書き。さぶ - え、神ですか……?神作をありがとうございます! (2022年8月19日 19時) (レス) @page35 id: 74c80fc40d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - 好きすぎて、題名の一部を名前にとりいれちゃいました。 (2022年8月2日 15時) (レス) id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年5月8日 21時

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