晴天。 ページ33
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「おー!さとみくん、梅雨明け宣言されたよ〜!」
「マジ!?やったなさとちゃん!これで一緒にグラウンド駆け回れるやん!部活頑張ろな〜」
良かったね!
目の前の2人の友人に喜ばれるのは何故だろう。
高校の昼休み。
いつもと同じ、何の面白みもない時間が繰り返される。
変化も無ければ彩りもないこの世界。
世の中こんなにモノクロだったっけ、と甘ったるい菓子パンを口に運びながら思う。
"関東地方梅雨明け 久々の太陽が顔を覗かせる"
そんなネットニュースのトップ記事を見つけてはまたまた大きな溜め息が漏れる。
「さとみくん…?晴れなのに浮かない顔してるね」
面倒見のいいなーくんが言う。
「なぁに、やっぱ悩み事?そんなもん部活で思いっきりバッド振れば晴らせるで!」
明るく元気なジェルが言う。
2人の優しい声掛けまでもが俺には1ミリも突き刺さらなかった。
あの少女の言葉以上に刺さるものはきっとない。
「あぁ、悪ぃジェル。俺部活辞めるわ」
俺は唐突にそう告げ、無造作にリュックから退部届けを取り出しヒラヒラと2人にそれを見せた。
「はぁ!?」
「え、嘘でしょさとみくん」
2人の声を俺は馬鹿みたいに虚しくあの少女の声に変換して聞いていた。
────さとみさん!
────好きです!
…なんて馬鹿げた夢。
猫が人間に化けた少女と恋したとか妄想が激しすぎる。
俺は狂っていた。
そんな現実ある訳ない。
そう思うことしかできなかった。
真実を虚偽だと思い込むことしかできなかった。
呑気に派手な音を立てパックジュースを飲み干す。
「まってさとちゃん、ほんまに部活辞めるん?」
「晴れの日嫌いだから辞めるのー。今から顧問に出してくるわ」
また理由にならない理由で彼らを誤魔化す。
あれだけ嫌った雨。望んだ晴れ。
なのにとある一日を境にして俺は
望んだ晴れを嫌い、嫌った雨を望んだ。
「え、待ってさとみくん、それってキスマ?」
席を立った俺をなーくんが止めた。
──────お願いだから、もう誰も俺を呼び止めないでくれ。
どうせ何奴も此奴も俺の前から
晴れの日はどうも俺の心を憂鬱にさせる。
ずっと、雨が降り続いてくれれば良かったのに。
そうすれば俺とあの少女はまた雨の力で出逢えるかもしれないのに。
そうやってまた雨の世界で出会った少女のことを思った。
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眠民。 - 颯桜さんの作品は、涙が出るほど切ないお話が沢山あるけれど、でもその涙って美しいと思うんですよ‥(語彙力)今回のお話も泣きました!!笑 (2月8日 18時) (レス) @page36 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 余白の落書き。さぶさん» 神だなんて恐れ多い☺️楽しんで頂けて幸いです (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - ネコ日和。さん» ありがとうございますとても嬉しいです😢🫶🏻 (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
余白の落書き。さぶ - え、神ですか……?神作をありがとうございます! (2022年8月19日 19時) (レス) @page35 id: 74c80fc40d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - 好きすぎて、題名の一部を名前にとりいれちゃいました。 (2022年8月2日 15時) (レス) id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年5月8日 21時