少女。 ページ2
・
傘を器用にクルクル回しながら歩く俺は、何処か自分というものがなくて景色の一部へと化している。
それがどれだけちっぽけな存在で、必要意義がどれだけあるのだろうか、
はたまたそんな面倒な思考だけが頭の中を支配する。
「…はぁ」
ふと漏れた溜め息は誰の元にも届かず
結局自分の元に更なる不幸として返ってくる。
雨の日は大抵、部活をサボる。
しかし残念ながら俺は真っ直ぐ家に帰って
勉強をするとかそういうお利口さんでは無い。
学校にはいたくねぇし、家にも帰りたくねぇ。
そんな我儘が自然と俺をここに連れてくる。
────────人の気配がしない静かな公園。
誰もいない雨の公園に、制服を着た男子高校生が
ひとりでたまーにやってくる。
この公園は昔から俺の大好きな猫が暮らしている場所で小さい頃は毎日のように通ってたからお気に入り。
「そーいや最近
クロというのは大好きだった猫のあだ名。
俺が幼稚園児なりの頭でつけてあげた名前だ。
容姿が黒猫だからクロ。
そんな単純な理由だった気がする。
公園にしてはなかなか豪華な屋根とテーブル付きの
ベンチに腰かける。
まぁ特に何かする訳でもなくただスマホアプリを立ち上げバカゲーをやって時間を潰すだけなのだけれど。
誰にも邪魔されない、俺だけの空間。
なんて素敵なのだろう。
雨の滴る音と水溜まりに映る自分の顔、
偶に通る車の騒音、草木が漣を立てるそんな世界。
昼間は子どもたちで溢れるこの公園も、雨さえ降ってしまえば俺だけの為に作り上げられた場所だと錯覚してしまう程豹変する。
────────俺だけの空間。
でも今日は違った。
先客がいたのだ。
見たことの無い女性だ。
いや、学生?少女と言った方が良いだろうか?
「……あの、そこ俺も使っていいですか」
ぼそっとつぶやげは下を向いた少女が
顔をこちらへ向けてニコッと微笑んだ。
『えぇ。どうぞ』
青く潤んだような瞳がまっすぐ俺を捕まえて離さない。
渦のように吸い込まれそうな、
────────そう、
まさにこの少女は俺にとっては
"雨"
そのもののような存在だった。
つまりは俺はこの少女に雨のような
嫌悪感を抱いたということになる。
234人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
眠民。 - 颯桜さんの作品は、涙が出るほど切ないお話が沢山あるけれど、でもその涙って美しいと思うんですよ‥(語彙力)今回のお話も泣きました!!笑 (2月8日 18時) (レス) @page36 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 余白の落書き。さぶさん» 神だなんて恐れ多い☺️楽しんで頂けて幸いです (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - ネコ日和。さん» ありがとうございますとても嬉しいです😢🫶🏻 (2023年1月16日 3時) (レス) id: f6025f27a2 (このIDを非表示/違反報告)
余白の落書き。さぶ - え、神ですか……?神作をありがとうございます! (2022年8月19日 19時) (レス) @page35 id: 74c80fc40d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ日和。 - 好きすぎて、題名の一部を名前にとりいれちゃいました。 (2022年8月2日 15時) (レス) id: 18b130b5d8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:颯桜 | 作成日時:2020年5月8日 21時