素直な気持ちで ページ20
僕の着ているパーカーのフードが、弱々しい力で引っ張られる。
思わず顔をあげると、グリムが必死に僕を呼んでいた。
『グリム…』
グリム「お前、すまほってやつ持ってんだろ!貸すんだゾ!」
『…あぁ、はい。』
僕からスマホを受け取ると
見よう見まねといった様子で、液晶を操作する。
どこかに電話する気だったのか
ある程度操作すると、自身の耳にスマホを当てた。
かと思えば、誰かのスマホと繋がったスマホを
僕に差し出した。
グリム「ほら!さっさと電話するんだゾ!」
『え…うん…』
渋々グリムからスマホを受け取り
誰かもわからない電話相手に向けて
「もしもし」と形式的に呟いた。
返ってきたのは、聞き覚えのある笑い声だった。
[おま…声暗すぎじゃね。
何、寂しくなって電話しちゃった感じ?]
『…な、んで……』
聞こえるだけで、酷く安心する声。
馬鹿にされていたって、呆れられていたって
その声が聞こえるだけで、沈んだ心が晴れていく。
大好きな、大切な友達の声。
『エース…ッ…』
エース[急にグリムの奴がお前と話せって言ってきて
何事かと思ってビビったんだからな〜
流石に俺も眠いしさぁ…10分だけだぞ。]
『…エース。』
エース[ん、何。]
怒られたって良い。面倒だって思われてもいい。
今は、どう思われたっていいから。
『…お願い……助けて…ッ…!』
この最悪な悪夢から、救い出してくれ。
エース[は……どうした…!?]
『わ、かんない…けど、今…スカラビアに…ッ…閉じ込められてて…
カリム先輩が……変になっちゃって…』
エース[……]
『関わるつもり、なかったのに…ッ…気づいたら、勝手に巻き込まれてて…!
もう、何が正しいのかも…何も、わからなくなって…ッ…』
エース「…大丈夫。一回落ち着け。」
思考が乱れて、ひたすらに嘆き続ける僕を宥めるような声だった。
いつだって、傍にいて助けてくれたのは
エースたちだったんだって、思い知らされる。
エース[珍しいね、お前がそんな慌てたり
そんな必死に俺に頼ってくるの。]
『ごめん…でも…』
エース[謝んなって。
俺、普通に嬉しいよ。
いつも1人で苦しんでたお前が、わざわざ俺に頼ってきたの。
デュースの野郎も引き連れて、絶対助けに行く。
だから、それまで死ぬな。無茶するな。]
『…うん。』
こういうところがあるから、僕は彼らに依存してしまう。
だから、思ったことは今のうちに言ってしまおう。
『エース、ありがとう。…大好き。』
好きなものは、好きだって。
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ゆる(プロフ) - 続いてほしいです………!更新楽しみにしてます! (2022年9月24日 18時) (レス) @page47 id: 3e63e5a771 (このIDを非表示/違反報告)
きゅうり - 天才か???好きです。 (2022年4月4日 21時) (レス) @page47 id: bfccae0caf (このIDを非表示/違反報告)
ナギ(プロフ) - 更新たのしみにしてますっ! (2021年9月10日 16時) (レス) id: 2f778f3504 (このIDを非表示/違反報告)
たろ。(プロフ) - 惚れた、、、フロイドくんやっぱりすき、、、更新楽しみにしてます……! (2021年8月26日 0時) (レス) id: ba071d904f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天空の巫女 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/TENMIKO/
作成日時:2021年8月1日 22時