人それぞれの守り方 ページ36
夢野「確かに貴方は、相当な弱虫です。
自分の弱さを言い訳にして、その大切な人から逃げたのでしょう。」
『それは…』
図星、なんだろう。
何も言葉が出ない。言いたいことが浮かばない。
もう少し、この人の言葉を聞いてみたい。
夢野「後悔して何になるんです。
起こってしまったことはもう取り返しはつかない。
強かったならよかった?
なら、今からでも強くなればいいじゃないですか。
過去を見て泣くより、未来を見て笑う方が得ですよ。」
『…小説家みたいなこと言うなよ。
人生は物語じゃない。思い描いた未来はそう簡単には現実にならない。
夢は、見るだけ見て…叶わなかったときが一番辛いんだ。』
夢野「小生は小説家ですよ。
そんな夢物語を、さも現実のように綴るペテン師です。
弱虫なら、弱虫らしく惨めに足掻いてみなさい。
逃げることだけが守り方ではありません。
足掻いて、藻掻いて
強くなって、その人の傍で戦う。それも一つの守り方。
小生は、そちらの方が素敵だと思います。」
嘘なのかもしれない。
この人、やっぱりどこか胡散臭いし。
…いや、嘘だったとしても
それでも、初めて見えた。
あの時から、暗闇しかなかった未来に
一つの可能性が。一つの道が。
どっちが恩人だ。私はそんな大層なものじゃない。
『ははっ…それも、そうですね。
ありがとうございます。さすが小説家ですね、夢野さん。』
夢野「…!」
『強くなって、守る…か。
考えもしなかったなぁ…夢野さんは……夢野さん?』
改めて夢野さんの表情を見ると
なぜか眼を見開いて、若干頬を赤らめている。
え、何この人。情緒を安定させて。
夢野「…その、そんな風に笑うのだな…と。」
『はぁ…私は元からこんな笑い方ですけど…』
夢野「いえ、そういうことではなく…
…先程ナイフを素手で掴んだ人だとは思えない程
可愛らしい笑顔だなと思っただけです。
……何を言ってるんだ、俺は。」
『一人称と情緒を安定させてください。』
不思議で、胡散臭くて
情緒不安定で、掴み所のない狐みたいな人。
だけど、凄い考えを持っている人。
…あぁ、こんな人が最初から傍にいてくれたら
思い切ってお母さんのこと、止められたのかな。
あー…ダメだ。どうしても過去見て泣きそうになる。
夢野「ん"ん"ッ…春原さん、でしたよね。
もう遅いですし、家まで送りますよ。」
『あ、っと…その…私、帰るとこないんですよね。家出少女なんで。』
今度は別の理由で夢野さんが眼を見開いた。
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にゃーちゃん - 初コメ失礼します!とても面白いです!更新楽しみにしてます! (2021年7月10日 12時) (レス) id: 6c3b400c86 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天空の巫女 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/TENMIKO/
作成日時:2021年3月20日 21時