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人は容易く鬼と成る ページ30

三郎くんたちと出会ってから、何年か経ち

一郎さんが「萬屋ヤマダ」を開業し、三人とも施設から出て

三人で暮らし始めた頃。

三郎くんたちとの関係が続いていた私は

新生活を始めた彼らの手助けをするべく、三郎くんと共に買い出しに出かけていた。


三郎「いいんですか、手伝ってもらって。」


『いいのいいの。まだ門限じゃないし

三人にはお世話になったからね。』


三郎「…Aさん、変わりましたね。

初めて会った頃は、いつも下を向いていたのに。」


『変わったのは三郎くんもでしょ。

なんで敬語になっちゃったかなぁ。』


私の家庭環境は、何一つ変化していなかったけれど

それでも、心の拠り所があることが

私の生きる糧になっていた。


三郎「そりゃ、Aさんは年上ですから。

僕より精神年齢は下ですけど。」


『一々毒々しいなぁ…まぁ、それこそが三郎くんだけど…って。』


三郎「どうしました?」


三郎くんの声が耳に入る余裕もないほど

私の意識は視界に注がれていた。

向かいから歩いてくる男性に、酷く見おぼえがあったから。

いや、知らないはずのない人だったから。


『お、父さん…?』


「……A。」


憔悴している。今日はお母さんに何をされたんだろう。

…というか、何で三郎くんから視線を外さないんだろう。


三郎「あの人がAさんの…初めまして、僕…」


「可愛い子だな。Aの彼氏かな。」


三郎「へ…いや、ッちが…います!

僕はそんなんじゃ…」


器に、一度ヒビが入れば

多少の衝撃で、いとも容易く崩れ去る。

お父さんの心は、お母さんが壊れた時点でヒビ割れ

我慢と恨みを溜め込み

この時、三郎くんという衝撃で塵と化した。


「…許さない。」


『え…お父さ…』


「お前だけ幸せになることなんか、許せるわけないだろッ!!」


お父さんの強く握られた拳が振り下ろされた先は、私ではなかった。

私の隣、紛れもない三郎くんが

少し離れた場所に殴り飛ばされ、道に座り込んでいた。


三郎「い"ッ!?」


『三郎くん!?お父さん、何してんの!?』


「うるさい黙れよ!!

俺がこんなに苦しんでるのに、お前は恋人とニコニコしやがって!

壊してやる…お前の幸せを、欠片1つ残らないぐらいに!!」


お父さんを止めようとした私の体は簡単に弾かれ

体制を立て直しているうちに、お父さんの拳はもう一度三郎くんに振り下ろされた。

何度も、何度も。

確実に壊すように。


三郎「うぁッ!?…ッ…やめ、ろ…!」


私の無力さを、嘲笑うように。

鬼を喰らって獣となる→←暗闇に落ちた一つの光



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にゃーちゃん - 初コメ失礼します!とても面白いです!更新楽しみにしてます! (2021年7月10日 12時) (レス) id: 6c3b400c86 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天空の巫女 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/TENMIKO/  
作成日時:2021年3月20日 21時

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