《 3 》 ページ46
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あの男に呼ばれてきた千尋は、ここにいるのが私だとは聞いていなかったらしい。
着くなり私の顔を見て、僅かに目が見開いた気がした。
その小さな変化にも簡単に気づいてしまう。
数日前までは一緒にいたのに、千尋が目の前にいるという事が何だかもっと昔の事のように感じる。
「…ひ、久しぶり?」
「そうか?」
「…そうでもないか。」
あれほど会いたいと思っていたのに、いざその時になってみればこのザマだ。
どう話しかければいいのか、どんな表情をしたらいいのか…頭が真っ白になって何にも考えられない。
…あれ?
私、前まで千尋とどうやって話してたっけ?
「……」
「…なに?」
何にも喋らない私を不審に思ったのか、眉を顰める千尋。
その見慣れた表情に、胸が苦しくなる。
千尋は何にも変わってない。
あの時のまま。
ただ私が変わってしまっただけ。
好きになってしまっただけ。
「…なんで呼んだの。」
「べ、別に呼んでない。あの男が勝手に呼んだだけで…」
「……んだよ、だる」
「……」
千尋は首に手を置いてため息を吐いた。
…そりゃ、迷惑だよね。
「…お前さ、さっきからなんなんだよ」
「…は?」
「そんな静かな奴じゃなかっただろ?
年下のくせしてタメ口でぺちゃくちゃぺちゃくちゃ1人で話してたじゃねえか。」
「なっ…!そんな事ないでしょ!それにタメ口でいいって言ったのあんたじゃん!!!!」
ついカッとなって言い返してしまった。
そんな私に、フッと口元を緩めて……小さく笑っている。
「…それだよ。」
「え…?」
「あいつとヨリ、戻したんだって?」
「……まあ」
「…順調なんだな。」
目が合わない。
千尋は私の目ではなく私の首元に視線を向けていた。
それは紛れもない、さっき征十郎から貰ったネックレスで。
白くて骨ばった綺麗な手がゆっくりとこっちに向かってくる。
その手がネックレスを触るのと同時に、掠めた肌から熱か身体中に広がっていく。
「赤司からか?」
「…ん、誕生日プレゼントって」
「そうか」
あ…
やめて。
やめてよ。
お願いだから、
「…良かったな。」
そんな安心したような笑みを浮かべないで。
「もう別れるんじゃないぞ。」
「……」
「お前らの尻拭いなんてもうたくさんだからな」
「……」
それは、また和奏さんと征十郎が寄りを戻さないように…でしょ?
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美樹菜(プロフ) - 赤司くんと黛先輩が好きなので、こういう小説見れて嬉しいです。これからも頑張ってください。 (2019年1月2日 23時) (レス) id: a4e34be67d (このIDを非表示/違反報告)
黒路 - 結局最後まで自分に甘いだけですね夢主ちゃん。現実にいたら恋愛でも結婚でも長続きしませんね。 (2018年9月18日 7時) (レス) id: fa1a11a816 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - かふぇらぺさん» ありがとうございます!夏休み終わってしまいました...全然更新出来ず申し訳ないです...。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - ぴこさん» いつも感想ありがとうございます!!長い間更新出来ずにすみませんでした。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - 黒路さん» 黒路さん、初めまして!読んでもらえて嬉しいです。そうはっきり言ってもらえるのとってもタメになります!あがとうございます!! (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羅夢 | 作成日時:2017年11月5日 14時