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7時18分。
征十郎と色々話をしていたら、随分と時間が経ってしまっていた。
少し慌てて家を出て繁華街の道を急ぐ。
征十郎と出会ってからここの道を通る事もすっかり無くなり、今では少し懐かしくも感じる。
「お姉さん!これから一緒にどう?」
「え〜どうしようかな〜〜」
それでもここは相変わらず、何も変わっていなくて。
寂しい人が集まる、寂しい世界。
「あ、この間のお姉さん!!」
そんな事をなんとなく思っていると、どうやら私にも声がかかってしまったようだ。
ここは無視につとめ後ろからかかる声に逃げる様に速度を速めれば、その男も負けじと着いてくる。
…ていうか、あんたに会った覚えないんだけど。
新手のナンパ?
「ちょっと待って!ストップ!!!」
「…ちょ、触んないでよ」
いきなり肩を掴まれ、振り払うように後ろを向いた。
途端に目に入る、明るめの髪とどこか幼さがある顔。
あれ?この人どこかで…
「いや〜また会えるとは思わなかった!」
ああ…どこかで見たかと思えば、あのバーでだ。
お酒飲んで酔い潰れた私に介抱しようかと声をかけてきた男だった。
「これも運命かな〜」
「…違うと思うけど」
「うん、その冷たさも健在だ!」
「……」
…なんの為に声掛けたのよ。
ふと腕時計を見ると、時間になっていた。
急ごうと思い別れを告げようにも、そのスキを与えてくれずに簡単に彼のペースに巻き込まれてしまっている。
「あの後、君に彼氏がいるって千尋に聞いたんだよ。
俺人の女の子に手を出す趣味ないからさ!千尋が気づいてくれてホント良かった!!」
「…ああ、そう。」
千尋、という名前が出てきて分かりやすい程反応してしまった。
それでも目の前のこの男は全く気づいてなくて安心する。
立ち話をし始めてもう5分は経っているだろう。
そろそろ行かないと真剣にやばい…さっきからカバンの中で携帯が何度も震えてる。
言わずもがな、これから会う昔の友達からだろう。
「ねえ、私これから行くとこあるからもうい…「あ、そう!今さ、千尋もちょうどいるんだよ!待ってて?呼んでくるから!」
「あ、うん………え?」
……は?
この男、今なんて言った?
「ちょっと待って!」という私の声は、既に背を向けて走り去った男の背中には届かなかった。
「…なんだ、お前か。」
数分後。
聞こえてきたその声に、無性に泣きたくなった。
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美樹菜(プロフ) - 赤司くんと黛先輩が好きなので、こういう小説見れて嬉しいです。これからも頑張ってください。 (2019年1月2日 23時) (レス) id: a4e34be67d (このIDを非表示/違反報告)
黒路 - 結局最後まで自分に甘いだけですね夢主ちゃん。現実にいたら恋愛でも結婚でも長続きしませんね。 (2018年9月18日 7時) (レス) id: fa1a11a816 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - かふぇらぺさん» ありがとうございます!夏休み終わってしまいました...全然更新出来ず申し訳ないです...。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - ぴこさん» いつも感想ありがとうございます!!長い間更新出来ずにすみませんでした。 (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - 黒路さん» 黒路さん、初めまして!読んでもらえて嬉しいです。そうはっきり言ってもらえるのとってもタメになります!あがとうございます!! (2018年8月22日 18時) (レス) id: 56b708a054 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羅夢 | 作成日時:2017年11月5日 14時