Episode.47 ページ24
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「どうぞ。」
少しして中から声がかかる。
遠慮気味にドアを開きゆっくり中へ入ると、そこにはテーブルにノートパソコンを広げて、椅子に腰を下ろしキーボードを打つ赤司くんの姿があった。
耳にさしていたイヤホンを抜き取り、チラリと此方に顔を向けた。
初めて見る黒縁の眼鏡をかけている姿に、不覚にもドキッと胸が鳴った。
「驚いたな、起きてたのか。」
私と目が合った彼の瞳は、眼鏡越しに優しく細められていて。
透き通った声でそう問うた赤司くんに「いや、まあ…」と曖昧な返事をしながら後ろ手でドアを閉めた。
「何してるの?」
「書類をまとめてるんだ。
父に頼まれた分のな。」
「へえ、大変そうだね…」
「ハハ、そんな事はないぞ。」
ここからでも分かるその紙の多さ。
パソコンを囲む様に置いてあるホッチキスでまとめられた書類を見て思わず驚愕した。
夜間のバイトもあるのに、なんて思いながら。
「何か飲む?」
「あ、や…気にしなくていいよ、大丈夫だから。」
慌ててそう言う私に、赤司くんは「どうした?」と言わんばかりの顔をして私を見つめてくる。
「眠れなかったの?」
「や、めちゃくちゃ熟睡出来てたんだけど…」
「だけど?」
「だけど…えっと…」
「ん?」
口を開き「雷が…」と言おうとした刹那、頭上でまた雷が音を立てて私は分かりやすくビクッと肩を揺らした。
それを目の当たりにした彼は、「ああ、そうだったな。」と何かを思い出したかの様にポツリと呟いた。
「いいよ、ここ使いな。」
「え?」
「ベッド。ここで寝てもいいよ。」
「へ?!!」
思ってもみなかった事を言われ、思わず間抜けな声が口から漏れた。
目を見開いて彼を見つめるも、いつもと変わらず悠々とした姿で私を見つめ返してくる。
私は、行き良いよく頭を横に振った。
「や、そんなっ!…だって、赤司くん…」
「俺はいいよ。
これ終わるまで当分かかりそうだし。」
「でも…」
「大丈夫、何もしないよ。」
「……っ」
いや、そんな心配なんかしてないです。
ただ、只管恥ずかしいだけなんです。
どう返せばいいか迷ってるだけなんです。
「…え、して欲しいの?」
「なっ…、そんな事言ってない!」
「ふふ、冗談。」
分かり易く顔を赤らめた私に、彼は悪戯っぽく笑う。
「おいで。」
「…うん。」
布団へ身を包んだ私を確認して彼はふわっと微笑むと、またパソコンへ目を移した。
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羅夢(プロフ) - yukakdonaldさん» そう言ってもらえると本当に嬉しくて心の支えになります^ ^ありがとうございます。 (2017年11月6日 20時) (レス) id: da06b6f43d (このIDを非表示/違反報告)
yukakdonald(プロフ) - 続きがすごい気になります!更新待ってます! (2017年11月5日 13時) (レス) id: 9b227061d2 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - KANAさん» 嬉しいです!!!本当に力になりますありがとうございます(^^) (2017年8月17日 16時) (レス) id: da06b6f43d (このIDを非表示/違反報告)
KANA - この作品 スゴく面白いです!これからも読ませていただきます!更新頑張ってください!! (2017年8月10日 18時) (レス) id: 3e35f2b141 (このIDを非表示/違反報告)
*。赤司 妃奈 。* - コメント読みました!私は、これからも、この作品を読むので続き頑張ってください!!応援してます^^ (2017年7月27日 14時) (レス) id: 97081c23e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羅夢 | 作成日時:2017年6月5日 22時