検索窓
今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:26,833 hit

Episode.43 ページ20

.



彼のその優しさが、私の胸の中をふわりと撫でて行く。


それを発端に、涙が目尻に溜まり始めた。






「だから、お前の気が乗る時でいい。


その時は一緒に、ご飯食べてくれるか?」

「……う、」



私の中の何かが切れて、堪えていた涙が頬を伝った。

目の前で私が急に泣き出すものだから、彼はお箸を置き慌てた表情を見せる。



「悪いっ…話しすぎた。
お前が悪いとかそういうのが言いたいんじゃなくて…」

「ちがっ…」

「一緒に食べるのも無理しなくていい。
俺の勝手な我儘だ。
それに、お互い都合だってある。
本当に時々でいいから。」

「違うの……!」



違う…

そうじゃないの。


俯いて、手の甲で涙を拭う私を彼は慰める様に声をかけてくれる。


その声が余りにも優しすぎて、耳が痛んだ。

言葉を選ぶ様に、ゆっくりと話してくれる彼に心が痛んだ。


喉が苦しいのを必死に堪えて、押し出すように声を発した。



「全然…や、じゃない…っ
毎朝、ご飯作る…出来るだけ、沢山一緒に食事する、から…」

「…っ」

「だからっ…」



ああ…本当は顔を上げて、彼の綺麗な朱色の瞳と交わしながら伝えたかった。



でも、無理だよ。



「もう、そんな悲しい顔…しないでよっ」

「A…」



本当は、泣きたいのはきっと赤司くんの方で。



私なんかが泣いちゃいけないのは分かってる。

こんな事言っちゃいけないのは分かってるの。


彼に悲しい顔をさせてしまったのは間違いなく私。




だけど、耐えられなかった。



そう思ってくれていた彼の気持ちを知って、耐える事が出来なかった。




だから、彼の願いを叶えるよりももっと沢山、


「幸せ」と言って喜んで貰えたらと。







「A。」




彼は、ため息をつくように小さく笑いポンと優しく私の頭に手を乗せた。



「ありがとう、すごく嬉しい。」



見上げたそこには、満面に喜色を浮かべて笑っている彼がいた。


優しく、私の頭を撫でていく。



私は必死に頭を縦に振り、頷いた。



「もう、朝からそんな泣いたら持たないぞ?」

「だ、だって…」

「折角、お前が美味しい手料理振舞ってくれたのに。」



「冷めちゃうだろう?」と悪戯っ子の様に笑ってみせた。



そして、「ほら、泣き止んで」と私の目尻に親指を当てて溢れ出てくる涙を拭ってくれる。



「お前は変わらないな。

昔も今も優しすぎてどうにかなりそうだよ。」



苦笑いを浮かべる彼に、私は笑顔を向けた。






.

Episode.44→←Episode.42



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (55 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
148人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

羅夢(プロフ) - yukakdonaldさん» そう言ってもらえると本当に嬉しくて心の支えになります^ ^ありがとうございます。 (2017年11月6日 20時) (レス) id: da06b6f43d (このIDを非表示/違反報告)
yukakdonald(プロフ) - 続きがすごい気になります!更新待ってます! (2017年11月5日 13時) (レス) id: 9b227061d2 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - KANAさん» 嬉しいです!!!本当に力になりますありがとうございます(^^) (2017年8月17日 16時) (レス) id: da06b6f43d (このIDを非表示/違反報告)
KANA - この作品 スゴく面白いです!これからも読ませていただきます!更新頑張ってください!! (2017年8月10日 18時) (レス) id: 3e35f2b141 (このIDを非表示/違反報告)
*。赤司 妃奈 。* - コメント読みました!私は、これからも、この作品を読むので続き頑張ってください!!応援してます^^ (2017年7月27日 14時) (レス) id: 97081c23e9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:羅夢 | 作成日時:2017年6月5日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。