Episode.43 ページ20
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彼のその優しさが、私の胸の中をふわりと撫でて行く。
それを発端に、涙が目尻に溜まり始めた。
「だから、お前の気が乗る時でいい。
その時は一緒に、ご飯食べてくれるか?」
「……う、」
私の中の何かが切れて、堪えていた涙が頬を伝った。
目の前で私が急に泣き出すものだから、彼はお箸を置き慌てた表情を見せる。
「悪いっ…話しすぎた。
お前が悪いとかそういうのが言いたいんじゃなくて…」
「ちがっ…」
「一緒に食べるのも無理しなくていい。
俺の勝手な我儘だ。
それに、お互い都合だってある。
本当に時々でいいから。」
「違うの……!」
違う…
そうじゃないの。
俯いて、手の甲で涙を拭う私を彼は慰める様に声をかけてくれる。
その声が余りにも優しすぎて、耳が痛んだ。
言葉を選ぶ様に、ゆっくりと話してくれる彼に心が痛んだ。
喉が苦しいのを必死に堪えて、押し出すように声を発した。
「全然…や、じゃない…っ
毎朝、ご飯作る…出来るだけ、沢山一緒に食事する、から…」
「…っ」
「だからっ…」
ああ…本当は顔を上げて、彼の綺麗な朱色の瞳と交わしながら伝えたかった。
でも、無理だよ。
「もう、そんな悲しい顔…しないでよっ」
「A…」
本当は、泣きたいのはきっと赤司くんの方で。
私なんかが泣いちゃいけないのは分かってる。
こんな事言っちゃいけないのは分かってるの。
彼に悲しい顔をさせてしまったのは間違いなく私。
だけど、耐えられなかった。
そう思ってくれていた彼の気持ちを知って、耐える事が出来なかった。
だから、彼の願いを叶えるよりももっと沢山、
「幸せ」と言って喜んで貰えたらと。
「A。」
彼は、ため息をつくように小さく笑いポンと優しく私の頭に手を乗せた。
「ありがとう、すごく嬉しい。」
見上げたそこには、満面に喜色を浮かべて笑っている彼がいた。
優しく、私の頭を撫でていく。
私は必死に頭を縦に振り、頷いた。
「もう、朝からそんな泣いたら持たないぞ?」
「だ、だって…」
「折角、お前が美味しい手料理振舞ってくれたのに。」
「冷めちゃうだろう?」と悪戯っ子の様に笑ってみせた。
そして、「ほら、泣き止んで」と私の目尻に親指を当てて溢れ出てくる涙を拭ってくれる。
「お前は変わらないな。
昔も今も優しすぎてどうにかなりそうだよ。」
苦笑いを浮かべる彼に、私は笑顔を向けた。
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羅夢(プロフ) - yukakdonaldさん» そう言ってもらえると本当に嬉しくて心の支えになります^ ^ありがとうございます。 (2017年11月6日 20時) (レス) id: da06b6f43d (このIDを非表示/違反報告)
yukakdonald(プロフ) - 続きがすごい気になります!更新待ってます! (2017年11月5日 13時) (レス) id: 9b227061d2 (このIDを非表示/違反報告)
羅夢(プロフ) - KANAさん» 嬉しいです!!!本当に力になりますありがとうございます(^^) (2017年8月17日 16時) (レス) id: da06b6f43d (このIDを非表示/違反報告)
KANA - この作品 スゴく面白いです!これからも読ませていただきます!更新頑張ってください!! (2017年8月10日 18時) (レス) id: 3e35f2b141 (このIDを非表示/違反報告)
*。赤司 妃奈 。* - コメント読みました!私は、これからも、この作品を読むので続き頑張ってください!!応援してます^^ (2017年7月27日 14時) (レス) id: 97081c23e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:羅夢 | 作成日時:2017年6月5日 22時