038..幸せに。 ページ39
「・・・しゃむくん。」
Aちゃんが事務所を出たことがそらるさんから伝わり、
俺は安堵のような、落胆からなのかはよく分からなかったけれど、
なんとなくことが静まってしまったことを感じていたときだった。
―――まふまふさんだった。
・・・もうなんとなく、威嚇まで諦めてしまった。
―――お幸せに、Aちゃん幸せにしないと、今度こそ絶対許さないから―――・・
そう言うつもりで、構えた。
笑顔を準備し、口に出そうとした時、
―――まふくんが先に、口を開いたのだ。
しかも、衝撃的な言葉を発した。
「―――ごめん。
・・・これ以上、何も言えないけど―――・・
俺じゃ、きっと無理なんだ。どうやっても、Aちゃんにとって友達にしかなれない。
彼女が鈍感なのに乗って、分からないのをいいことにして、
ああいうことをしてしまって、・・関係を持ってしまっても、
将来、俺もAちゃんも後悔するだけだ。」
「まふ・・・くん?」
吹っ切れたような、切なそうな、どっちとも取れない笑みだったけれど、
「・・・付き合ってないから、俺たち。」
最後に一言だけ、これ以上ないくらい哀しそうに呟いて。
すれ違いざま、ポンッと俺の肩をたたいて、
まふくんは町の人混みへ溶けていった。
『幸せに。』
涙とともに零れた言葉。
その途端に、申し訳なさと罪悪感に襲われた。
けれどそれ以上に・・
“素直に[君]に会いたかった”んだ。
・
まふまふside〜
―――これで、いいんだ。
あぁ、あとで鏡見ないと。その前に、顔洗わないとな。
・・・俺は、好きな人の幸せを願っただけだ。
あいつ、天月のように。
そのためにはきっとしゃむくんの幸せを願わなければならないんだ。
彼女は異性としては、しゃむくんしか目に入れてないのだから。
それが意識的にせよ無意識的にせよ、
俺に勝ち目はないのだから。
しゃむくんが泣いたらきっと、彼女も泣いてしまう。
しゃむくんが笑えばきっと、――・・彼女も笑ってくれるだろう。
―――笑っている顔が、一番かわいいよ。
口説くとか、そういうことじゃなくってさ。
―――・・君が幸せなら、俺も幸せだと感じられるから――・・
気持ちだけは伝えておきたいけど、やっぱりややこしくなりそうだから、
Aちゃん、君が好き[だった]。
だからしゃむくん、おまえが幸せになってくれ。
俺の分も。
―――天月の分も。
・
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るな(プロフ) - ぎゃーーーーー涙がーーーーー (2014年8月29日 21時) (レス) id: 8d24367ff0 (このIDを非表示/違反報告)
羅意思 彩月 - 感動でジーンときました。 (2013年9月15日 21時) (レス) id: 8eceea9d47 (このIDを非表示/違反報告)
オワタ ミク(プロフ) - 面白かったです\(^o^)/泣けてくる話でしたー! (2013年2月28日 22時) (レス) id: 4e16a5c933 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜(プロフ) - 泣けました! 完結おめでとうございます! (2013年1月25日 4時) (レス) id: 30bc6ead24 (このIDを非表示/違反報告)
乃愛(プロフ) - 完結おめでとう! (2013年1月24日 13時) (レス) id: d7db411825 (このIDを非表示/違反報告)
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