運命なんかじゃ、ないんです。【歌い手小説】 (ページ3)

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002..少年は旅前にしたいことがあった。ページ3

“見送りの言葉”さえ役目を逃し、

・・・というよりかは、
私のようなあがり症が努められるわけもなく自分で諦めてしまい、

―――とうとう私は、あの先輩に何も言えず仕舞いだった。

・・別に、期待している、わけでもない。

一回だけ、もう一度校内で先輩を見たことがある。

背が高くって、それに相応した仲間に囲まれていた。

『なーなーお前、しゃむおんって知ってるー?』

『・・・知らね。何人、それｗｗ』

『96猫とかvip店長とかは?』

『さー、知らね。』

――よく見れば、抜けてカッコいい。

肌は透き通るように白い、髪は感触が想像できるほどフワリとなびいている。

「A～!!音楽始まるよ!!」

「あ、うん。」

覚えてる。美術の教科書持ってたのも、ワイシャツの第二ボタンまで開いてたのも、全部全部。

もう一度、教材を落とそうか、なんて考えたのも、全部だ。

―――そういえば声、似てたなあ。

それでももう、確かめようもない、

つかめない真実は、全て桜の幻。

あれは単に、被っただけなのだ。

炎天下の空の下で起こった疑似体験なのだ。

―――大体あれだろう。

上履き学年別の学校で先輩が後輩のシャーペン拾うなんてどこにでもある。

時期が被ったのだ。時期が。時間が。日にちが。

同じ招待状に招かれた出来事、それだけだ。

「・・・しゃむおん先輩、か・・。」

―――アルバム、買いに行かないとなぁ。

全ての後悔が、春風に流されて消えていく。

どこかで、鳥が鳴いている。・・綺麗な綺麗な声で。

「――――・・呼んだ?」

そんな言葉が聞こえた時。

鮮明に焼付いた記憶の声が、

夏と春の思い出の色が、

今重なった。

「え?は・・せせせせせせ、先輩!?」

「うん。・・・(人1)さん、だよね?」

「あ、はい、っっってなんで名前ぇぇぇえ!!!?」

「いや、シャーペンの子だよね、覚えてますよ、俺。」

―――自分を指さし、クスクス笑う先輩。

・・・わぁ、カッコいい・・。

しかも、聞けば聞くほどしゃむおんｓにそっくり声だ。

――――もう、思い切るしかない。

「先輩は・・・しゃむおんさんなんですかッッ!?」

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「―――そう。

♪燃え上がれ哀しみよ最期に輝かせてあげるわ
歌われぬ悲歌うたのため火をくべ荼毘だびに付せ

どう?本物でしょ。」

―――その笑顔は無邪気で先輩っぽい反則物。

―――その歌声は、紛れもないしゃむおんｓで、もっと反則―――・・。