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求めるもの * ページ43

「エース。昔話をしようか」
エ「は?」
私はベッドに腰掛けてエースにはイスを勧める。
「私とお兄ちゃんは、新世界のある島出身なの。母親は私が物心つく前に死んで、父親はお兄ちゃんでも顔を知らない。そんな私たちを育ててくれたのは島の長老様ね。さて問題。島の連中は私たちをどうした?」
エ「知らねえよ」
考えたりせずに答える。
「父親が得体の知れない海賊だったから、“得体の知れない子供”“鬼の子”“って呼ばれたの。人って醜いよね〜」
今なら笑って話せる。私にはお兄ちゃんがいたし、もうその傷は癒えた。
「名前を呼んでくれるのはお兄ちゃんと長老様。二人がいなくなってからはもう酷かった」
思い出したくない記憶だった。これはまだ少し引きずっている自分がいる。
与えられる暴力、暴言、終いには島を追い出されるときた。
悲しそうな顔をするエース。やっぱり君は優しいね。人の為にそんな顔ができる。
「エース」
名前を呼べば下がっていた視線がこちらを向いてくれる。
「私だって最初は嫌だったのよ?この船に乗るの」
エ「え?!」
そりゃ驚くわ。
「私ね、エースが欲しいものが何か分かるよ」
私だってずっと欲しかった。だからあの街で働いて、得られるかもしれないという淡い望みを持っていた。けれどそれは得られる事はなかった。心に巣食った闇は簡単には晴れないし、傷は癒えない。そのせいで、やっと届きそうになった時に自らそれを拒んでそれを手にしなかった。
エース、君も同じだよね。試してるんだよね。彼らから与えられるかもしれないそれが真のものなのか否か。
エ「お前に何が分かるんだ!!もう放っておいてくれ!!俺はお前なんか嫌いだ!!!」
そう言って荒々しく出て行く後ろ姿は、悲しげだった。
エース、欲しいものは、求めるものは…無条件で得られる愛情、だよね。
親からの愛情を知らない子供は、知らないからこそそれを無意識に求める。誰かから必要とされたいと願い、自分は無意味な存在ではないと証明して欲しい。生まれてきた意味を探して、苦しんで…。でもエース。もう独りで抱えないでいいんだよ。私たちがいるから。
だからお願い。
自分のチカラで自分の周りを固めた殻を破って、光の元に出てきて。
そうしたら、君も気づけるから。
この世には、無条件で得られる愛情がある事を。
寛大な心で、愛情を与えてくれる人がいる事を。
なにより…、君の求めたものが何か分かるから。
私がそうであったように…。

温もり ※モビー視点第二弾 *→←心 *



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シュケル - ヒロインも相手をいたぶるのが癖になりましたね!!!! (2016年12月25日 6時) (レス) id: 355b3beae0 (このIDを非表示/違反報告)
シュケル - それにしても驚きましたよねぇ!!!まさかルッチ達がCP0に昇格するなんて!!!! (2016年12月24日 17時) (レス) id: 355b3beae0 (このIDを非表示/違反報告)
シュケル - 他のリクも心待ちにしていますよ!!!! (2016年12月24日 10時) (レス) id: 355b3beae0 (このIDを非表示/違反報告)
シュケル - あなたはCP9がお好きなんですね!!!理由は何となくわかります!!!! (2016年12月23日 17時) (レス) id: 355b3beae0 (このIDを非表示/違反報告)
シュケル - なぜCPOを出そうと思ったのですか??? (2016年12月23日 9時) (レス) id: 355b3beae0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:焔彩 | 作成日時:2016年10月10日 20時

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