永遠のキスは星に【赤司征十郎】

29●●○リスク ページ31

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頬の痣を、マスクの上からそっと指で押してみる。






「……やっぱりまだ痛いな」






部活中、私は一通りの仕事を終えて、体育座りをしながら部員たちを眺める。



何気に顔を殴られたのは初めてだったかもしれない。


おばあちゃんが亡くなって、初めて叔母さんに会ったときから、嫌な予感はしていた。

大きな天体望遠鏡を抱えて今の家にやって来たときは、心底嫌そうな顔をされたっけ。



私がこの仕打ちのことを、誰かに相談したり、警察に訴えたりしないのも、天体望遠鏡が庭にあるから。

あんな大きなもの、施設に持っていかせてもらえそうにないし、設置できる場所も無さそうだし。



でも絶対に手放したくない。


パパの形見だもの。



ただ、最近はあまり望遠鏡を使って星を見れていない。

叔母さんもさやも、何かと雑用を私に押し付けてくるし、一人の時間があまり無いから。


前に、夜遅くにそっと庭に出て星を見たこともあるけれど、結局一日の疲れですぐ寝てしまうから、それを実行出来たのは一回きりだった。



だから、あの公園を見つけたときは嬉しかった。



自由な時間がほとんど無い私は、叔母さんには部活に入っていると言っておいて、実際はその部活の時間を星を見る時間にあてていた。


でもそんなこと、ばれるのも時間の問題だ。


私がバスケ部のマネージャーになったのは、そんな理由もあって。

ただ、征と一緒に星を見るということは、征の居残り練習が終わってから星を見るということ。


そしてそれは、家に帰るのが極端に遅くなるということで、叔母さんに怪しまれる可能性が高くなるということでもある。




でも私は、そんなリスクをおかしてでも、バスケ部のマネージャーになり、征と二人で星を見るということを選んだ。


そうしたかったんだ。

私は自分の気持ちを優先した。






「なっ！？」






突然目を誰かにふさがれる。

黒く染まった視界の中で耳に響いたのは、「だーれだ！」なんておちゃらけた声。






「……葉山先輩ですね……」






苦笑しながらもそう答える。






「あったり〜！ よくわかったねっ、Aちゃん」






今は休憩タイムだし、こんなことするのは葉山先輩しか思い浮かびませんしね………。




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