本当はずっと素直になりたかった

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…はっ、とした。




俺、今何やってる？

太輔に呆れられて…その後どうしたんだっけ。



状況が分からず周りを見渡した。







『つ？おーい、ミツ？』


「え、あ…えっと…」






無意識に電話をかけてたのか、

手にしたスマホの向こうから声が聞こえる。




…俺、電話かけてた事すら覚えてない程ショックだった…？


さっきの自分の行動と太輔の表情を思い出して、胸がぎゅうっと締め付けられる。







『もう…ミツから電話かけてきたんだからしっかりしてよ。』


「悪い…。…俺、何の話したっけ？』


『え？覚えてないの！？』


「うん…」


『あんなに感動すること言ってくれたのに！？』





驚いたようなやけにデカいニカの声が聞こえる。



俺何言ったの…？








聞けば、俺はニカに熱く語ったらしい。


最初は何熱くなってんだって思ったけど、

あまりにミツが真剣だから話を聞いたと。







『千賀は不安なんだよ。

…千賀絶対寂しがってるよ。

本当はニカに止めて欲しかったんだと思う。寂しくて不安で…。』




『なあ、ニカ。

お願いだからちゃんと謝ってやって。

それで、ちゃんと好きって言って抱きしめてやって。お願い…二人に後悔して欲しくない…』





俺がニカに言ったらしい台詞。


そんなの言ったっけってまるで違う人が言ったみたいな台詞。

あまりに記憶になさすぎて戸惑う。




…けど、俺の本心なのかも。




俺が今太輔に思ってること。


…俺も今不安で仕方ないから。




太輔に『好き』って抱き締めて欲しかっただけ。

ただ俺だけを見て欲しかった…。






そんな気持ちが今の千賀と重なって焦れったくなって電話したのだろう。




…無意識ってのは怖いけど…(苦笑)







『ミツ、ありがとね。』



またぼーっとしてたら、ニカの声で現実に引き戻される。


なんでお礼…？



『ミツが真剣に言ってくれたから。だから、…俺、意地張ってないでちゃんと千賀に言うよ。』





電話の向こうで笑うニカが頭に浮かんだ。

いつものニカの明るい声。


何が何だか分かんないけど…とりあえず良かった。






…俺のおかげなのか…？





『おう、しっかり気持ち伝えてやれ。』


「うん！…明日、健永迎えに行くね。」


『待ってる。千賀も待ってるよ。』







…きっと、2人はもう大丈夫だろう。


多分、ふたりの笑顔はすぐ戻る。








けど、俺のついた嘘はもう取り消すことができない。

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