本当はずっと素直になりたかった

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「…ひろー、ひろ？どうしたの？」






ぼーっとしてたら目の前に太輔。



やっと2人きりの時間になれたのに、全然嬉しくない。


モヤモヤした気持ちは一向に晴れる気配がない。









「やっと健永眠れたみたい。寝てくれて安心した。」




小さく微笑んで言う太輔に、ふつふつと怒りが湧いた。





健永、健永ってなんだよ。

なんで下の名前で俺じゃない違う人の名前を呼んでそんな顔すんだよ。




…なんでだよ…





どうしようもなく泣きそうになって下を向く。









俺じゃない誰かに優しくする太輔がやだ。





…だけど、それよりも、

メンバーに嫉妬してる俺が嫌だ…。









「ひろ？大丈夫？どっか体調悪い？」





下を向いて何も言わない俺を不思議に思ったのか心配そうに覗き込んでくる。




その太輔の優しさを利用した。

俺も、太輔を独り占めしたかった。





少しの間だけでいいから…

そう思って働いた俺のちょっとした悪戯心。








「…あたま、痛い…」


「え？」







自分でも驚いた。

こんなにサラッと嘘が出てくるなんて。

嘘をつく気なんてなかったのに。









「大丈夫？？どうしたのかな…疲れちゃった？」




太輔は俺の一言で、一気に心配そうな表情になった。

大丈夫？って聞いて俺の頭を撫でてくれる。








太輔の目に、俺が写ってる…


太輔が俺のことだけ考えてくれてる…






それがどうしようもなく嬉しくて、俺は体調の悪いフリをした。









「…いたい、しんどい…」





その言葉にますます太輔の顔が心配そうに歪んだ。

あ、心配かけすぎたかも…ってちょっとの後悔。






だけどそれでも、嘘をついてでも太輔に俺を見て欲しかった。


そんな醜い嫉妬心。

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