本当はずっと素直になりたかった

23 ページ23

俺たちの働いてる芸能界。

周りから見たらキラキラして見えるこの世界は嘘や偽りも多い。







目の前の事を信じてもそれは真実なのか分からないし、裏がある時もある。


思ってない事を言わされたり、言われたり…。

暗くて闇の深いこの世界だからこそ、

俺たちだけは、2人だけは、




闇に染まらずに真っ白でいようって…





愛する人までに嘘をついてお互いを見失ってしまうのはいやだ、って…







いつか2人で話した思い出が鮮明に頭をよぎった。








思い出すことのなかった思い出が、

今になって思い出される。







太輔は昔は凄くピュアで素直だった。

目の前の事をそのまんま信じて丸ごと受け入れるそんな真っ白な人だった。



…でも太輔は大切な人に裏切られたらしい。

それは1回だけじゃなくて、何回も。




そこから太輔は人を信じられなくなった…


とまではいかないけど人の言動を深読みするようになってしまってる。



太輔は言った。



「全部俺が悪かった…信じすぎちゃったから。」



信じることは何も悪くないし、太輔は何も悪くないのに…なのに太輔は自分を責めた。

背負わなくていい物を背負った。





だったら俺も一緒にその背中に背負った荷物を背負ってやろう。


全部の物事に真っ白な心で全く疑わずにいる事は難しいけど、

俺と一緒にいる時だけは深読みなんてしないで、

裏切るとか嘘だとかそんなの考えなくていいようにしようって…

心に決めてたのに。






太輔が去ったドアを見ながら

収拾のつかない自己嫌悪と後悔に駆られる。



もう一度やり直せないか、もう何百回も後悔した。






俺は、自分の為に嘘をついたんだ。






泣いても泣いても涙が溢れてくる。

太輔を失う恐怖に、カタカタと手まで震えてきた。









…ねえ太輔…っ







行かないで。




…君とちゃんと話がしたかった。

24→←22

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す