【銀魂】Sleeping PrincessⅡ (ページ2)

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第五十一訓ページ2

『ﾊｧ…ﾊｧ…』

どれだけの人数斬っただろう
どのくらいの時間神経を尖らせ続けているのだろう

周りは血の海と化していた
昼間とは思えない地獄のような光景だ
辺りに充満する咽返るような血の臭いに顔を顰める

ようやく敵の数が減ってきたか
しかしその分立っている味方の数も減っていた

「師匠、後ろ！」

『…っ』

立花の声に反射的に横へ転がりこめば先程まで立っていた場所に刀を振り下ろす男

続いてやって来た立花がその男を斬り伏せた

長時間の斬り合いにAも疲労が見え始めていた

体中至る所にできた切り傷が痛む
気持ちとは裏腹に限界を訴える身体に鞭を打ち、ただ刀を振るい続けた

『…あ、』

転がる死体に足を取られ前方に傾く身体
チャンスとばかりに視界の端に居た浪士が突きを放つのが目に入った

『う゛ぁっ』

咄嗟に身体を捻るも躱すまでには至らず左肩に激痛が走る
投げ出された身体がそのまま地面を滑り、衝撃で脱げた笠が転がった

ｽﾞｼｭｯ
と嫌な音を立てて、肩に突き刺さる刀が抜かれる
目の前で刀を振り上げる男の動きがやけに遅く見えた

こちらへ走ってくる立花が何か叫んでいる

『(死ぬのか…)』

こんなところで
何も達成できないまま

男越しに見える太陽が憎たらしい程輝いている

その眩しさに目を瞑った

″————侍になりな″

『…っ！』

ふと脳裏に響いた言葉に閉じた目をカッと開く

そうだ、何弱気になっているんだ
まだ死ぬ訳にはいかないじゃないか
あの人に…会わなきゃ…

伝えなきゃ
生きてあの人に

右手にある刀を握りなおしたと同時に男の刀が振り下ろされる

Aは渾身の力で男に向かって刀を投げた

「ｶﾞｯ…！？」

顔のすぐ左で制止した浪士の刀は勢いを無くしそのまま手から滑り落ちた

その直後、目の前の男も背中から倒れていく

Aは男の喉から噴き出た血を頭から被りながらその様を眺めた

『ﾊｧ…ﾊｧ…』

血の雨が止み、何とか立ち上がれば呆然としていた立花がハッとしたように駆け寄ってくる

「師匠！」

倒れた男から刀を抜きながら立花を見やれば悲痛な表情をしていた

その表情にどういう意味が込められているのか図りかね視線をずらす

酷い有様だ
何十人と転がる人間

一面に敷き詰められる濁った赤、赤、赤

未だ続く刀同士がぶつかる音、苦しそうな呻き声

ふと大量の足音と雄叫びが聞こえそちらに目を向けた

刀片手にこちらへ駆けて来る軍団