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三話 ページ9

「そんなところで何やってるの、君たち」

昨日助けてくれたようで殺すと言ってきた
よく読めない男だ。

戸を開けた人物の顔を見ると、
私は自然と一歩ほど後ずさりしてしまう。

彼はそれに気付いたのか気付いていないのか、
口元を緩めて話しかけてくる。

「起きたんだね、おはよう」

「……」

何と答えるべきか、言葉につまっていると、
部屋の中から優しそうな声が聞こえてきた。

「君が総司と平助の言っていた例の子か。
もう調子は大丈夫なのかい?」

声の主は、声色だけでなく雰囲気も優しそうだった。

大丈夫です、と私がそう言うよりも先に
総司と呼ばれる男が会話に割り込んでくる。

「大丈夫みたいですよ。
よく眠れたんじゃないですか?
顔に畳の跡がついてるし」

その言葉に私は慌てて顔を隠した。

「……冗談ですよ」

私の後ろにいた少女が呆れた顔で言い、
総司という男を冷めた目で見つめている。

「酷いなぁ千鶴ちゃん。バラさなくてもいいのに」

……う、嘘?

そんな風に茫然としていると、
部屋の中心に座っていた妹が飛びついてきた。

「お姉ちゃん!」

「響希、無事でよかった……!」

新選組の屯所と聞いて何か酷いことを
されていないか気がかりだったが、
元気そうな妹の様子を見て安心した。

「それにしても、新選組の屯所というだけあって、
なんだか戦臭さがある所ね……」

「あのねぇ、君。
助けてもらった立場でその言い方はどうなの?」

総司と呼ばれる男にそう言われ、はっとする。
思わず考えていることを口に出してしまったようだ。

「す、すみません」

悪気はなかったものの、
彼らに対して酷い言い方を
してしまったことに間違いはない。

小さく頭を下げると、
先程の優しげな男性が
まあまあ、と総司と呼ばれる男をなだめた。

「実際に俺たちはそういう風に
見られている部分もある。
それにまだ彼女も混乱しているだろうし、
それぐらいでいいじゃないか」

「……近藤さんが、そう言うのなら」

総司さんは近藤さんと呼ばれる人の一言で
私に対する愚痴を止めた。
彼はまだ不満そうだけれど。

けれど、もしも昨夜この人たちに
助けられなかったら、私たちが間違いなく
殺されていたのは確かで。
一応、お礼言った方がいいのだろうか。

「あの、昨晩は助けて頂き、
本当にありがとうございました。
……では、私たちはこれで」

出来る限り深く頭を下げ、
妹の手を取り部屋を出ようとすると、
待て、と低い声が部屋の中に響いた。

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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

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