薄桜鬼～花吹雪物語～ (ページ8)

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二話ページ8

少女は微笑みながら口を開く。

「お体に何もないようで良かったです。
皆さん心配していたんですよ。
平助君あたりは特に」

平助……？
聞き覚えのある名前だと思い記憶を巡らせると、
昨晩の髪を高く結った背の低い男が浮かんでくる。

心配させてしまったのか。
何だか申し訳ないような、
有難いような、変な気分だ。

……と、若干胸が温かくなったところで、
ふと我に返る。平助と人が居るという事は……。

「……あの、此処はもしかして」

恐る恐る確認するように尋ねた私に、
少女は少し困った顔をしながら言った。

「……こちらは、新選組屯所です」

やはりそうだったか。
彼らから逃げ切れなかったことを実感し、
肩を落とす。

そして再び妹の存在を思い出し、
勢いよく少女の肩を掴んでしまった。

「あの、妹は……！」

すると少女は微笑み答えてくれた。

「大丈夫ですよ、ご無事です。
妹さんのいらっしゃるお部屋にご案内しますね」

「……ありがとうございます」

少女の気遣いに感謝し、私は彼女の背中を
追いかけるようにして部屋の外へ出た。

――長い廊下に私と少女の足音が小さく響いている。

少女がなぜこんな人斬り集団と言われる
新選組の屯所に居るのかは……
聞かない方がいいのかもしれない。

特に会話もなく少女の後ろを歩いているうちに、
一つの部屋から複数の話し声が聞こえてきた。

「いやだからよ、もう少し詳しく教えてくんねぇか？」

「まあ、そう急かすなよ新八。ちいさいガキ相手に」

部屋の中はとてもざわめいているようだ。
するとその中から、聞き慣れた声が聞こえてくる。

「お姉ちゃんが言ってました。
知らない人には口を聞いちゃいけないって。
だから私は何も答えません！」

……この声は、響希？

「いや、でもなあ、見ちまったんだろ？」

「何をですか？」

「あはは、それは言っちゃいけませんよ新八さん」

「言うか、俺もそこまでアホじゃねえ！」

「いやだなぁ。僕は心配して言っただけですよ。
新八さんは口が軽いから」

何だかよくわからない話をしているようだが、
今は妹が無事であることに何よりも安心した。

中の騒々しさは収まることがない雰囲気で、
襖を開けるかどうか迷ってしまっている少女を
横目で見ていると、私たちの影に気付いて
誰かが察してくれたのだろうか、
すっと襖が開けられる。

そして目の前に現れた見覚えのある顔に、
私の身は自然と強張るのだった。

「そんなところで何やってるの、君たち」