三十六話 ページ42
緊張が高まる中、そっと廊下を覗いてみると。
「にゃーん!」
ね、猫の声……?
「な、なんなんですかこの猫!
もしかして沖田さんのですか!?
責任持って捕まえてください!」
慌てる山崎さんに対し、
沖田さんは走る足を止めずに強気で言う。
「僕のじゃないってば!
捕まえたいのはこっちも山々!」
「総司。口論する暇があるなら、
もっと気合を入れて走ってくれ」
「一君に言われたくないよ!」
どたばたと廊下を走る三人が真剣な顔で
追いかけているのは、なんとたった一匹の猫。
う、うわ……。
[人斬り集団]と呼ばれる新選組隊士が、
必死に猫と追いかけっこなんて。
「何があったの?」
近くの部屋の千鶴さんもひょこっと顔を出す。
「追いかけっこしてるみたいよ」
私があえて真顔で言うと、
彼女はぱあっと明るい表情になった。
「わぁ、まるで冗談みたいな光景だね!」
いやいや千鶴さん、
感心している場合じゃないでしょう。
三人はあっという間に私達の目の前を通り過ぎていく。
「吹雪! 千鶴!」
「平助君!」
ぱたぱたと駆けて来る見慣れた姿に、
私たちは思わず食い掛かる。
「今のって何?」
「どうして沖田さんたちが猫を追いかけてるの?」
私たちの威圧に押されたのか、
平助さんは疲れたような顔をした。
「あー、その辺を説明するとさ、
すごく長くなるんだけど良いか?」
「……か、構わないけれど」
「んじゃ作戦会議だ! この部屋借りるぜ!」
いつの間にか平助さんの隣に居た
永倉さんと原田さんに私たちは悲鳴を上げる。
「あ! 吹雪ちゃん。
左之さんとか平助とか見てない?
ちょっと探してるんだけど――」
軽く息切れしながら通りかかる沖田さんと斎藤さん。
私は自分の部屋の中を指差す。
「お二人でしたら、
作戦会議とか何とかで私の部屋に」
「作戦会議か。妙案だな。では俺達も邪魔しよう」
え……?と断れないまま、
私は部屋に入って行く二人を見送るのだった。
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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時