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三十五話 ページ41

「失礼します」

不意にふすまの向こうから誰かの声が聞こえてきた。
きっとこの声の主こそ、観察方の人だろう。

「島田、山崎、両名参りました」

「よし、入れ」

土方さんの許しが下って少ししてから
広間に入ってきたのは二人の隊士。

「観察方所属、島田魁と申します。
以後、お見知りおきください」

最初に口を開いたのは大柄な隊士さん。

「観察方所属、山崎烝」

きっぱりとした口調でいうのは、
眼差しが印象的な隊士さん。

「私、雪村千鶴といいます。
父は蘭方医の雪村綱道です」

千鶴さんの言葉に島田さんと山崎さんは
驚いた顔をする。

「平隊士には伝えられん話だが、
新選組が綱道さんを探す理由には、
幕府との密命が深く関与している」

近藤さんの口から出た[密命]なんて言葉を聞くと、
本当に私が此処に居ても良いのかハラハラしてしまう。

「雪村君の素性を隠したまま
男装で生活してもらっているのは、
この情報を内外に伏せる為だ」

二人は小さく頷き、次に私へと視線を向けた。

「ところで、そちらの方は?」

「ああ、彼女が話していた花宮君です」

「……花宮吹雪です。よろしくお願いします」

私は姿勢を正し、彼らに頭を下げる。
彼らは納得したように挨拶を返してくれた。

「……よし。これで会議は終わりだ。
お前らはとっとと解散しろ!」

土方さんの合図により、幹部の皆が次々に席を立つ。

「観察方の二人は残れよ。
幕府の密命について説明する」

皆は簡単な挨拶をしながら広間を出て行く。
千鶴さんと私も、彼らのあとに続いた。




つい先程朝ご飯を食べたばかりの感じがするが、
太陽の位置を考えればもうすぐ昼食の時間だ。

「今日のお昼の担当は……
確か原田さんたちだったかしら」

そんな些細なことを考えながら
畳の上をごろごろしていると――
近くで何かが割れる音が私の耳に届いた。


バリィィイン!!
と、いきなり響く大きな音で私は飛び上がった。
そして廊下の方からは怒鳴り声が聞こえてくる。

「一君、そっち!」

「わかっている。だが目に見えたからと言って、
捕らえられるかは別の話だ」

この声は、沖田さんと斎藤さんだろうか。

「下手な言い訳してないで、
もっと気合入れて走ろうよ!」

「何やってるんです? こんな所で……わ!?」

「この声は山崎さん?」


ガラガラガッシャアアン!!

という一番大きな音に、
流石の私も居てもたってもいられず
部屋の外を覗いてみた。

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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

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