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二十四話 ページ30

「う……やべぇ、食いすぎた」

「ご、ごちそうさまでした」

――結局平助さんに奢っていただいて、
二人でお腹をかかえながら屯所へ戻ると、
入口では沖田さんが待ち構えていた。

「おかえり、二人とも」

「あ、ただいま戻りました」

軽く頭を下げると、彼は相変わらず
何を考えているのかわからない微笑を
浮かべている。

「随分と遅かったんじゃない?」

「……そ、そうか?」

視線を逸らす平助さんに気が付かず、
私は沖田さんに事情を説明する。

「これには理由が。
帰りに平助さんと一緒に茶屋に寄ったんです。
奢ってもらってしまったのですが」

「ばっか、吹雪!」

隠しても余計に雰囲気を悪くすると思い、
素直に沖田さんに伝えると
平助さんは慌てる素振りで私の名を呼ぶ。

「どうしたの? 平助さん」

「ふぅん」

沖田さんは少し考える仕草をして呟いた。

「帰りに一緒に茶屋……
それに平助さん、ね。
随分と積極的なんだね、平助さん?」

「なっ! そんなことねえよ!」

にやにやと笑みを浮かべる沖田さんに対し、
顔を真っ赤に言い返す平助さんを見て、
何だか微笑ましくなる。

「まあ、君たちがどんなことをしていようが
僕には関係ないことだけど」

そう言って踵を返して歩き出す沖田さんに、
平助さんと私は呆気にとられる。

「何だぁ? 総司のやつ」

程なくして、私は平助さんにお礼を言って
自室に戻るのだった。



「響希、居る?」

妹の部屋からは何も聞こえない。

思い切って響希の部屋の戸を開ける……が、
残念ながら部屋には彼女の姿は無かった。

私は部屋の隅に彼女の荷物をそっと置いた。


……両親のことを話したあの日から、
私はまだ一度も響希とまともに口を聞いていない。

広間には顔を出さない。
部屋に入ろうとしても拒まれてしまう。

ご飯もさっぱり食べなくなってしまったので
彼女の体調も気がかりだ。

落ち込んだ気持ちのまま、
私は何気なく中庭へ向かった。



ふと顔を上げると、
斎藤さんと――響希の姿が見えた。

なぜあの二人が一緒に?

疑問も浮かんできたが、
一番驚いたのは彼女の顔色だ。

疲れているような目をした響希は、
此処に来た時よりもだいぶ痩せ細っていた。


彼らは中庭の隅にある桜の木の下の縁台に
腰掛ける。

一度話しかけようとしたが、
とても話に入れる雰囲気ではなかった。


二人は黙ったままだ。


……しばらくの沈黙の後、
斎藤さんの方から口を開いた。

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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時

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