二十二話 ページ28
静まり返った夕暮れ。
母は改めて私の方を見つめる。
「あなたは響希を守りたいのね」
静かに頷くと、母は凛とした声で言った。
「では、強くなりなさい」
母の言葉をよく理解出来なかった私は聞き返すと、
彼女は優しい笑みを浮かべる。
「もう響希の悲しむ顔は見たくないのでしょう?
だったら、響希が悲しまないように強くなって、
妹を守りなさい。
私や父上はこの先、いつ居なくなるかわからないわ。
もしも、私に何かあった時は……
響希のこと、頼むわよ」
母の声に乗せられるように、
私は強く頷くのだった。
私は強くなる。
響希が悲しまないように、強くなる。
もう泣かない。私は自分の力で……響希を、守る。
あの日、母とそう誓ったのだ。
そう誓ったはずなのに、
なぜ涙は止まってくれないのだろう?
「もしも、私に何かあった時は……
響希のこと、頼むわよ」
母との約束を思い出し、
改めて妹を守り切らなければと実感する。
けれど。
「あの日から、まだ四年しか経っていないのに」
こんなにも早く逝ってしまうなんて。
「こんなのっ……こんなのって無い……」
私が泣いている姿を見て、
藤堂さんは初め、黙っていたけれど。
「……あの、さ」
突然、口を開いた。
「俺、今お前がどんな気持ちなのか、
よくわからねぇ。
……けど、こんな俺で良ければ支えるよ」
予想外だった反応に私は藤堂さんを見つめ返すと、
彼は慌てて首を振る仕草をする。
「いや! だから、その……
何かあったら、俺に言ってくれねぇか?
ち、力になるからさ!」
上手く言葉が見つからないのか、
藤堂さんは少し顔を赤くして、下を向いてしまう。
けれど、その言葉はとても私の支えになった。
「……あんまり一人で背負い込むなよ」
そう言うと、藤堂さんは優しく微笑んだ。
なぜこの人はこんなにも優しいのだろう?
私は部外者で、新選組にとってただのお荷物なのに。
「……とう」
「え?」
「ありがとう、平助さん」
心が温かくなるのを感じて、不意に出た言葉。
平助さんはその言葉に、今までで一番嬉しそうな
笑顔で頷いてくれた。
改めて、今まで過ごしてきた家の中を見渡し、
心の中で思い馳せる。
父上、母上。
これから頑張ってみせます。
少しずつでも響希を守れるような、
強い人になりたいです。
だからどうか、見届けてください。
私達の成長を。
――気がついた時には、
頬を伝っていた涙は止まっていた。
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作者名:reika. | 作成日時:2012年7月5日 20時